第5話出会い
席に戻った俺は、黒板に貼られている新クラスが気になって仕方なかった。厳密には新クラスというよりも、さっきの佐藤リアムと書かれた人物がすごい気になるのだ。この名前、俺がピアノを始めるきっかけになった金髪の少女と同じ名前なのだ。
でも佐藤とかって日本じゃ一番多いい名前だし、リアムもまあハーフ
俺はあまり期待せずに、でもどこか落ち着かない気持ちのまま教師がやってくるのを待つ。俺たちが少しばかり早くきすぎてしまったのか、クラスにはまだあまり生徒が集まっていない。俺がぼーとしながら時計の方を見ていると。
「ねぇ悠人! クラス違くなっちゃったじゃん」
幼馴染に頭をスパーンと叩かれた。
「いっつ、なんだよ」
いきなり叩かれて少々不機嫌になり、麻里の方を睨み付けると麻里は黒板のプリントの方を見ている。
「だから違うクラスになっちゃったねって」
「あ、うん、そうだね」
「は? なにその態度? もっと悲しそうにしなさいよ」
「はぁ……」
思わずため息が出てしまう。何で俺は朝から幼馴染にこんなだる絡みをされてるんだ?
「あー俺は麻里と違うクラスになって世界一不幸ですよ」
「何でそんな棒読みなのよ! もっと感情込めてよ」
「チッ」
「あー今舌打ちした!」
「あの、もう席に戻ってくれない?」
だんだん……というか最初っからうざかったのだが、さらにうざくなってきた。俺が不機嫌オーラを出していると、幼馴染はそれを察しいたのか中指を立てて。
「フッキュー」
といってきた。全く何なんだあいつ? 俺は幼馴染から解放されて少し気分が良くなると、ぐっと伸びをした。
そういえば麻里になんか用があったような……。
………………あ! そうだ、麻里にハーフの子のことを聞こうと思ったんだ。いきなりぶっ叩かれたから忘れてた。いや叩かれただけで忘れるなよ俺。衝撃与えただけでデータが消し飛ぶ昔のゲームじゃないんだからさ……。
俺はちらっと麻里の方を見てから、席を立ち上がり麻里の方へと向かう。
「なぁ麻里、ちょっと話があるんだけど」
「私はないから、じゃあ」
そういって麻里は、プイッと横を向いてしまった。めんどくさこいつ。別にハーフの子のことなんて麻里に聞く必要ないしな。待ってればそのうち来るだろうし、やっぱこいつ要らねーわ。
「じゃあ」
俺は一言そう言い残し、麻里の席を後にする。後にされた麻里は「え、ちょ、まっ」などと言っていたが、俺は振り返らずに席に戻った。席に戻ってからは、またぼーとしていた。
それから数十分してから、ようやく担任がクラスに入ってきた。
「えーそれじゃあみんな、早速だけどもう新クラスに行って出席番号順に座ってくれるかな」
若い女教師にそう指示され、三年F組になった者たちは隣のクラスへと移っていった。俺はEなのでそのままだ。だが出席番号が違う。前の番号より二つ後ろになっている。皆席を立ち、各々自分の席の場所へと移っていく。その波に乗るように、俺も自分の席に座る。
元F組だった者たちも含めて全員が席に座ると、教卓の前に立っている女教師の前田先生が意気揚々と自己紹介を始めた。
「たぶんみんなもう知ってると思うけど、私がこの新クラスの担任になった
何とも素晴らしい自己紹介だ。こんなに接しやすそうな自己紹介があるだろうか、いやない! と、俺が前田先生の自己紹介に少し感動していると、前田先生がちらっと廊下の方を見た。
「あとみんな気づいている人もいると思うけど、このクラスに新しく転校生が来ます。それじゃあ入って入って」
先生が廊下の方へと手招きをすると、ガラッと教室のドアが静かに開かれる。俺はその入ってきた転校生を見て、
「うおぉぉ可愛いー!」
「何だあの子は!?」
「女神か」
などと言って舞い上がっていた。
「ははは、みんな落ち着いて。それじゃあ佐藤さん、お願いね」
先生は苦笑いのようなものをしてから、転校生に自己紹介を促している。
「はい、わかりました」
そう返事をした転校生は、白のチョークを手に持つと黒板に「佐藤リアム」と書き。
「前原学園から転校してきた佐藤リアムです。短い間ですが、よろしくお願いします」
「はい。てことで新しく私たちのクラスメイトになる佐藤リアムちゃんです。リアムちゃんは一旦私とこの後職員室に向かうので、皆さんは授業の準備をしていてください」
先生はそういうと、佐藤を連れて教室を出て行ってしまった。先生と佐藤のいなくなった教室はというと……。
「おおおーーまじ可愛かったな」
「ああ、正直俺の人生の登場人物の中で一番可愛かったな」
「お前の人生の登場人物少なすぎだろ!」
なんて会話が、あちこちから聞こえてきた。まあ可愛いこが転校してきたらテンションも上がるのだろう。実際俺も、ものすごい上がっている。でもこれは別に転校生が可愛かったからとかじゃない。
憧れて尊敬していた人物が自分と同じ高校、しかもクラスメイトになったんだ。それはテンションが上がるのも必然だろう。そこで俺は、あることを決意した。俺があることを決意すると同時ぐらいに、誰かから肩を叩かれた。
「よ、悠人。また同じクラスだな」
「おう
俺に声をかけてきたのは、高校から友達になった
俺はガタッと席を立つと、光希の方を向きさっき決めた決意を大きな声で口にする。
「おい光希! 俺、さっきの転校生に告白するわ」
そう高らかに宣言すると、ワイワイガヤガヤしていた教室が一瞬で静まり返った。
そしてなぜか三年E組にいる麻里が、飲んでいたイチゴ牛乳を口から吹き出していた。
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