第2話 魔法少女めぐる登校する

9月になったと言うのに、まるでサウナの中にいるような暑さだった。去年も夏休み終わりは暑かったと、地球温暖化による異常気象を嘆きつつも、眼前には去年とは変わった景色が広がっているように感じているのであった。そう、めぐるはあの日、「魔法少女」になったのである。

学校に向かう途中、黒髪のポニーテールの女の子が話しかけてきた。

「おはよう、めぐる」

「おはよう、れいな」

彼女は楠木れいな、同級生である。同級生の中では最も仲がいい。いわゆる親友である。

「めぐる、今日はツインテールなんだね、どうしたの、普段は下ろしてるのに、もしかしてイメチェン?」

「まあ、それもあるんだけどね、実は私、魔法少女になったんだ。魔法少女って私の中ではツインテールのイメージがあるんだよね」

「ふふふ、冗談だよね、ははは、本当はなに?夏休みに、正人くんとなにかあったの」

正人とはめぐるの幼なじみである。

「違うよ、正人は関係ないよ、私、魔法少女になったから」

そう、言い終わった瞬間、れいなの表情から笑みが消えた。

「魔法少女ってどう言うこと?本当にそうなの?」

「うん、そうなんだ」

そこから学校に着くまで、あの日の公園での出来事を説明した。

「そうなんだ、確かにめぐるがそのペットに比べて、それほど大きな砂嵐を出したのなら、何か特別な力が自分にあると思うのも不思議じゃないよね。でもね、めぐるそれって......」

そう言いかけたところで、ふと今の時間が気になり、腕時計を見ると、時計の針は8時15分を指していた。

「めぐる、チャイムなっちゃったよ、遅刻だよ遅刻、私皆勤賞ねらってたのにー」

「大丈夫、安心して、私がなんとかするから」

「なんとかって、その、魔法少女って話、もう冗談はやめて、今日のめぐる変だよ」

「まあ見ててって」

そう言うと、めぐるは目を閉じて「時よ戻れ、私たちを遅刻させるな」と唱えた。

「何言ってるの、めぐる、急ぐよ」

れいなはそう言って、めぐるの手を引き、全速力で学校に向かった。校門の前の時計を見た瞬間

「嘘でしょ、なんで...」

「だから言ったでしょ、私がなんとかするって」

時計の針は7時50分を示していた。めぐるが魔法少女として時間を改変したかのように。

「まさか、本当にめぐるは魔法少女なの」

「本当だって、言ってるでしょ」

「わかった、疑ってごめんね、それより、魔法少女ならなんかマスコット的なやつがついてるんでしょ?どこにいるの?」

「ああ、メニュポンね」

と言うと、めぐるはカバンに入っていたその「メニュポン」を見せた。

「これって...」

「メニュポン、熊の妖精なんだ、地球の人間の悪感情の発生を魔法少女に防いでもらおうと、宇宙からやって来たんだって、そして、偶然私にその才能があったってわけ」

そう言うと、れいなは腕時計を再び確認し、

「そうなんだ、あ、私今日日直だから、日誌を取りに行かないといけないんだった。めぐるまた後でね」

れいなは、走って行ってしまった。でも、遅刻しなくて良かった。めぐるは安堵すると同時に、魔法少女としての二度目の人助けをできた嬉しさによる高揚感を感じていた。

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魔法少女めぐるの日常 田中葵 @tanakajajaja

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