第144話 A.D.2040.愛のある方に
青い瞳は悲しそうに話をつづけた。
「今は二人の時間と空間を切り取り、連結しています。でも、二人が一緒に居られるのは、ビックバーンによる高次元が発生している間だけです……残念です」
力なく頭を下げる女神の言葉に七海が笑いかける。
「ううん、やっぱり、あなたは私の神様だよ。本当に来てくれたんだね。やっぱり私って天才? ふふ、沙耶がいなかったら無理だったかな。がさつな私は細かな調整なんてできないからなあ。コンパイルすらも通らなかったしね、アハハ」
明るく話し続ける七海に首を降り続けるナイン。
「私は本当の神になるべき者。でもならなかったのです……二人が会えるこの空間を維持できるのは10分程度。時間が過ぎたら二人は暗い海中に沈んでしまうのです」
下を向いたままの青い瞳。
それでも七海の笑みは消えない。
その時セブンスが明るく声をあげた。
「いいのよナイン。七海は哲士と一緒に居ることが望みだから」
七海と哲士の前に表れた、青い瞳と赤い瞳を持つ二人の女神。
哲士がセブンスを見て、七海にそっくりさに驚きながらも、大きく頷いた哲士は笑う。
「ハハ、そうかお前たちが俺と銀さんが見た女神なのだな……七海とこれから仲良く氷漬けになるわけだ。このまま世界が終わるまで一緒……光の女神よ礼を言う。本当にありがとう」
二人に女神として感謝される、神を諦めたナインは、耐えきれず感情を口にした。
「なんでですか。二人ともこれから死ぬんですよ。今の逢瀬はうたかた幻、この後、誰にも見つからず、暗い冷たい海に沈むのですよ。怖くないのですか。生きていたくないのですか。私が完全な神なら、あなた達を救えたかもしれません。それなのにお二人は感謝してくれる……恨んでもいいのです、未熟な私を」
穏やかな表情を浮かべた七海。まるで愛しい我が子を見る様だった。
「未熟でいいじゃない? 大事なことは、約束を守ろうと力を尽くしてくれたこと。あなたはとっても優しい子なのがわかる。私の遺伝子が入っていると思うと誇らしいわ。そして嘘がつけないみたいね、この後サプライズがあるんでしょ?」
七海の言葉にナインは語れない未来を想う。
……遠い未来に哲士が救助される。
……哲士は強い孤独から七海を慕い、生まれ変わりのセブンスを作りだす。
……哲士は醜く老いた自分に絶望して、セブンスの恋人のクロムを造ってしまう。
……神として産まれた青い目の女神は、老いた哲士を愛してしまった。
つい口にしそうになり、セブンスに止められ、青い瞳で二人を見つめるナインに、球体の中から七海が語りかけた。
「二人の天使よ行きなさい。あなたが生きている時代へっ……そして叶うといいね、あなた達の思いが相手に届き、愛のある方に進めるように」
言葉が出ないナインにセブンスが笑顔で肩を叩く。それから七海の最後の言葉が聞こえた。
「遠い未来に七海と哲士は再び出会い愛し合う。姿形は変わっても魂は変わらない。オレンジの時間に新しい恋が始まるの……それまで二人で眠るの……バイバイ私の神様達。恋をしなさい千年経っても、一万年が経っても、女には恋は大切だから……また会いましょう……マイ神様」
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