第143話 A.D.2040.二千年の再会

 不意にナインの意識が目覚めた。

 不安が心を侵食したが、すぐ横でセブンスが手を握っていてくれた。

 安心するナインにセブンスが告げた。


 ここは二千年前の海、地球という滅びた故郷。


 ゆらゆらと海中を揺れる七海が見えた……崖から飛び降りた直後……彼女は徐々に真っ暗な海に沈んでいく。


 ナインがセブンスに頷き、予言の力を発現した。

『七海は崖から飛び降りたが意識を取り戻した――息が出来る球体に囲まれる』

 七海が目覚めた。


 二人は七海に気がつかれないように背後から着いていく。

「ここはどこなのかな? 天国にしては暗いし、もしかして私は地獄行き!? まあ、身投げとか、世界を破滅させるシステムとか、色々やっちゃったからな」

 海へと身を投げた七海が気がついた場所は、見たこともない透明なボールのような球体の中だった。


 内側の壁に手を着けて外を見てみると、深いブルーに包まれている景色が広がっている。視線を変えて下を見ると、真っ黒な暗闇が口を開けていた。

 どうやらここは海中のようだ。それもかなり深い場所。


 七海を包む球体は、どんどん、暗い深海へと潜っていく。

 しばらくして光が届かなくなった時に、七海は暗い海底に小さな光を見つける。

 小さな光に近づいていくと、やっとその正体がわかった。


 七海が入っている球体と同じものがもう一つ。

 停止していた七海の球体は静かに近づいていく。

 間近に近づいた時、七海の目に映った姿。


「ああ、哲士! やっぱりコドクシステムは――私は神を生み出したんだ!」


 球体は哲士に近づき二つの球体は一つになった。

 目の前に立つ愛しい人にかける言葉はない、ただ、走り出し、哲士の胸に飛び込む七海。


「ドジこいちまったな。来てくれたのか。済まない七海」

 謝りながらも、哲士の太い腕が強く七海を抱きしめる。

 分厚い胸に顔を埋める七海は幸福を感じていた。

 オレンジ色の時間に感じた、二人が別れてしまうビジョン、今それは覆された。

 

 静かに二人の様子を見守っていた、ナインの青い瞳と、セブンスの赤い瞳。

 行方が見えない二人の女神に七海が声をかけた。


「どこにいるの? 私の神様。ありがとう。望みを叶えてくれて」

 七海の感謝にナインは固い表情で首を振る。


「いいえ。私はあなたの神ではありません。願いも叶える事は出来ないのです」

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