第100話 A.D.4021.フェニック
人間が造ったもので唯一、重力で結合されているセブンスドール。
今、最後の新しい姿を世界に発現する。
空中に現れた球体の磁場に全て、紅のマシンの全てが吸い込まれる。
すべてが粒子レベルで拡散、集中、再構成され、赤い渦が回転を始めた。
数秒後、地上に立ちあがる新たなる紅の機体。
頭にはエーギルの兜。身体アキレウスの鎧。ティルフィングの剣を左右の腰に二本。左腕にはアイギスの盾。フルアーマを装着した紅のマシンは、重力シールドを張らずとも、セブンスドールの二万倍の防御力を得た。
「セブンスドール・フェニックス起動完了」ラバーズの宣言が聞こえる。
一回り大きくなったボディには赤と白のツートン塗で、最強進化系ドールズ。フェニックスが世界に表れた。
かつで地球で神の武器と防具を冠した、常識を超える防御力と攻撃力を手に入れた紅のマシン。とくに目を引くのは、背中に収めた巨大な大砲、ドーラカノン。背丈を越える全長、それを斜めに背負ったフェニックス。
進化したセブンスドールは所有者の怒りにより、強力な攻撃力を持ったようだった、その姿にフィフスが頷く。
「セブンス、おまえの意識がそのマシンを構成している。今までは人を殺したくない、そんな思いが防御を主にした、セブンスドールを造りあげていた。だが今は人を殺したいクロムの仇をうちたい。結果、超攻撃的なフェニックスを手に入れた」
空中に浮かぶフィフスをにらみつけるセブンス。
「どうしたらいいかなんてわかんない。絶望より怒りが私の糧。姉さん……いやフィフス、おまえを殺すだけが望み!」
一歩出たフェニックスはフィフスの視界から消えた。
二万倍の強化された機体には、フレームバスト機能が追加されていた。
通常、人間は一秒間に60フレームにより脳内で認識、行動を行っている。
フレームバストはフレームを6000まであげて、100倍もの認識と行動を実現する。
目では捉えらない100倍ものフェニックスの動きに、おおよその予想で、ガトリングを打ち込むフィフス。
多くの金属音が周りに響く、フェニックスがティルフィングの剣で銃弾を全て叩き落す。
「ふむ、速度はかなりのもの。では防御はどうか」
後退したフィフスは四つの刃を限界まで広げて、立ち止まり視界に表れたフェニックスへ向かう。
迎え撃つそぶりも見せず、フェニックスはフィフスの攻撃を無防備で受ける。
強烈な回転でフェニックスにあたるが、傷どころか身動きひとつしない。
「怪物だな、まさに怒る紅のマシン」
フィフスが後退しつず、最強兵器リニアレールガンを、フェニックスの頭部に打ち出した。
光の速度で打ち出された、小さな金属は核兵器並みの威力を引き出す。
だが、フェニックスにはまったく効いていない、フィフスドールから束縛の為にチェーンが撃ち込まれるが、セブンスは実剣であるティルフィングの剣で空中を薙ぎきる、瞬間にフィフスドールのチェーンアンカーが全てバラバラに切断され、本体にも大きな傷が残される。
姿勢安定を無くし、地上に落ちたフィフスは。目の前に立つフェニックスに語りかける。
「強いな。だがこれだけではあるまい。真の力を見せてみろ」
フィフスが指すのはフェニックスに、新たに装備された背中の巨大な砲塔。
セブンスが地上のフィフスを、冷めた目で見た後に声を大きく出す。
「ブラックホールエンジン最高出力。相転移システムへのバイパスオープン。ドーラカノン砲のライフルリング、オン」
フェニックスが持つドーラカノン砲は、拡張された本体のブラックホールエンジンを暴走させ、別次元を開き反物質を機体に転送する。強制的に転送された別次元の物質が、この世界に現れる時に巨大な反発力を出す。その破壊力は星を消す事も三次元宇宙さえ消し去れる。
まさに銀河一の攻撃兵器を、セブンスは圧倒している現状で使う事を選択した。
ただ、自己の怒りのために。姉であるフィフスに。
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