第93話 A.D.4021.三つのメモリチップ

「いっけーーーーー!」

 空中から一気に地面へと下降するセブンスドール。


「そうか! セブンスめ、なんてことを考えたんだ」

 アカエイのパイロットが驚きを見せた時、地上に激突するセブンスドール。


 機体を囲む真球の重力のシールドは、周辺に凄まじい衝撃を与えた。

 ひび割れ、砂が舞い散る大地、衝撃波を受けたアカエイは跳ね飛ばされて、二つに折れた。


 地上にできたクレータの底に立つセブンスドール。機体が折られたアカエイへと一気に飛ぶ。


 セブンスドールが重力の剣を振り下ろした時、アカエイの頭部が分離し、空へと飛びあがる。振り下ろされた剣でアカエイのボディは重力で切りつぶされ、完全に破壊消滅した。


 アカエイの脱出ポットが戦場を離れていく。

「逃がしちゃいましたね」

 ファルコンの声にこれでいいとセブンス。

「パイロットを殺すのが目的じゃない。さあ、急ぐわよファルコン。クロムの元へ」

 空中に飛び上がったセブンスドールは赤い残像を残しながら、敵基地へ飛び去った。


「いっちゃったね。これでよかったのアイアンサンド」

 ヘルメットを脱いだアカエイ前席のパイロットはショートカット、幼さが残る姿。

「ああ、フィフスの読み通りだよリン。あとはこれだけだな」


 細くて黒い髪を指で梳かす。東洋的な美少女が金属の小さな箱を開けた。

 中にはメモリチップが三個入る溝があった。

 だが二つだけにしかチップは収まっておらず、最後の一つは空だった。


「このチップを彼らに届ければミッションは終了……だが」

 操縦者リンが言葉を続けた。


「嫌な予感がするんでしょ? 私もそうなの……ねぇアイアンサンド戻らない? フィフスのところ」

 リンの言葉に、いつもは無表情なアイアンサンドが表情を変える。


「フィフスが遅れをとるとは思えないが……確かに気にかかる」

 一個だけ入ってないメモリチップの溝を見ていた黒髪の少女は思案する。

 二人は破壊兵器フィフスドールの操縦者だった。


「そうでしょ? 戻ろうよ。ね! もしかしたら私たちが必要になるかも」

 考えていたアイアンサンドは頷いた。

「分かった。このメモリチップは確実に渡すとして、私達も見届けよう。フィフスとセブンスの行く末を。銀河の選択を」


 高く舞い上がったアカエイ頭部の脱出ポットは、垂直上昇から並行飛行に移行して、セブンスの後を追った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る