第91話 A.D.4021.セブンスの誤算
「警告は聞くべきだなセブンス。小物だと思っていると大けがをする」
アカエイの後席のパイロットが呟くと、前席の操縦者は行動を開始した。
「フィフスの作戦通りに行くよ!」
地上に坂のようにねるようにように現れ、強力なレーザーを打ち込むアカエイ。だが強力なレーザーを重力シールドM・G・Fで打消し、剣で応戦するセブンス。
「もう少しで届きそう……もう一撃」
セブンスの振る剣は重力で出来ていて、剣は地面ごと押しつぶすしかし重力の及ぶ範囲をかすめるように逃げるアカエイ。
しかし、ファルコンの計算はだんだんと命中精度を上げていく。
「ここ! セブンス打ち込んでください!」
ファルコンの補助を受けて、セブンスドールの重力の剣がついにアカエイを捉えた。
手応えを感じたセブンスが、勝利を確信した瞬間に、動き出す砂漠の色と同化したアカエイ。
「なぜ? 私の重力の剣が当たったのに」
セブンスドールの剣で切られたものは、超重力により押しつぶされ、別次元へ送り込まれる。どんな装甲もエネルギーシールドも防ぐ事は出来ない筈。
「予想外よ、剣が当たれば終わりだと思っていた」
うろたえ操縦を忘れたセブンスの紅の機体に光の束が伸びる。
右肩に当たったレーザーはアカエイが放ったもの、貫通はしなかったが軽微なダメージを受けた。
「どうして? なぜ私の攻撃が効かず、相手の攻撃を受けてしまうの?」
セブンスが呆然とする中、紅の機体を高速移動で、その場を離脱させた戦闘OSファルコン。
「セブンス、シールドが破られる理由がちゃんとあります。気をしっかりもってください。今、無防備状態です。追撃されたら今度はただではすみません」
ファルコンの言葉でセブンスは我に返り、操縦桿を握りファルコンの指示通りにいったんアカエイから離れる。
「今、回避ヴァレッドを組み込みました。数分ですがステングレイの追撃をかわしてくれる筈です。その間に私の説明を聞いて行動指針を決めてください」
ヴァレット、簡単なコマンドでセブンスドールの動きを自動的に判断、実行させるもので、バトルパレット(戦闘の混合板)の略である。
すべての兵器にヴァレットは導入され、操縦者が反応できない不意の事態、操縦不能時の自動操縦などに使われる。紅の機体はファルコンのヴァレットにより自動操縦状態になった。
「セブンス、アカエイに攻撃が通じず、ビームを防げなかったのはこの砂の惑星のせいです」
ファルコンの言葉に理解できないと首を振るセブンス。
「そんなバカな。ここより条件の厳しい宇宙空間で戦えたのよ。しかも相手はエイトドール、なぜアカエイごとき戦闘機に苦戦するわけ?」
ファルコンはたしなめる様に話をつづ受けた。
「相手を甘く見てはいけません。いいですか。この星の砂と重力、ステングレイがバラまいた反射型チャフが問題なのです。宇宙空間は重力がないため、ヒッグス粒子によるシールドは100%こちら側でコントロールできます。ですが重力下では微調整がうまくいきません。そこに光を反射する金属片、そして巻き上がられた大量の砂。これをすべてセブンスドールは敵の攻撃とみなして、シールドのヒッグス粒子を濃くしています。そのため、シールド内のヒッグス粒子の抵抗が大きくなって、剣の威力が大幅にダウンしているのです。防御も同様で球体に展開するシールド内部、たくさんの砂と金属片を保持した状態なので、敵の攻撃への反応が遅くなって、ビームーを受けてしまうのです」
マスグラビティフォース、セブンスドールの最高の盾が砂と金属片と重力によって妨げられていると、告げられたセブンスは右手で額を抑えた。
「そんな原始的な、ささいな事で最新最高のシステムが機能しないなんて。どうしたらいいの」
セブンスの嘆き、そして徐々に精度を上げてくるアカエイの攻撃。ファルコンが警告する。
「あと63秒でこちらのヴァレットの解析が終わってしまいます。セブンス、時間がありません対処を急ぎましょう」
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