第90話 A.D4021.単機で挑む
「セブンス一人でアカエイを倒すというのか」
クロムの呟きにラバーズが意見する。
「クロム。それいい方法かもしれない。このまま戦えば時間も被害も計り知れない。セブンスドールなら負ける事はありえない、こっちがフィフスと戦闘を始めたら、重力子移動で一気に飛んできてもらおう。最悪アカエイを倒せなくても、本隊がたどり着く時間は稼げる」
セブンスにアカエイを止めてもらい、全機で敵の本拠地へ向かう。
ヒッグス粒子を使った重力変化を使った移動ができる、セブンスドールなら追いつける。
「……セブンス。ここは任せた。破壊できなくてもいい、時間を稼ぐだけで。できるか?」
クロムの返信にセブンスが頷く。
「大丈夫。そっちが基地にたどり着いたら一気に飛ぶから」
クロムの機体OSラバーズが念を押す。
「絶対に深追いしない、砂漠専用機ステングレイは手強い」
ラバーズの注意に、再び頷いたセブンス、
紅のマシンが空中に飛び上がる。
セブンスドールには移動用の機器はついていない、シールド発生装置もついていない、女性タイプの華奢な機体。そのままでは防御力は低く、空を飛ぶこともできない。だが事実は反対で、空中を無音で高速で移動、敵の攻撃を完全に防ぐ事ができる、全てはヒッグス粒子を利用した重力を操る事で実現できる、セブンスドールしか持たない特筆するべき能力。
重力シールドはヒッグス粒子を多く発生させ、自機の周りに張るシールドをセブンスが展開する。地中から外へ出たアカエイは、尻尾のブラスタ砲で空中に静止する紅のマシンを攻撃した。強力なビームはセブンスドールを直撃するが、その閃光はボディに届く寸前に消えた。
重力シールドの効果に安心したクロムは全員に、敵基地への進軍を指示した。
歩行速度を速めて、十機のヘルダイバはフィフスの待つ基地へと急ぐ。
「ここは通さないからね」
二発目のビームーを打ち消したセブンスが、右手で腰の剣を引き抜くと同時に漆黒のエネルギーが剣の柄から伸びる。
「重力シールドは破れない。今度はこっちからね」
セブンスは剣を振りかぶり、アカエイに切りかかった。
セブンスの動きを見て砂に潜るアカエイ、そこにセブンスの剣が命中、たくさんの砂が空中に舞い上がった。
「外した。でも、いける!」
クロムの忠告で時間稼ぎに徹しろと言われたが、いいところを見せたい、クロムが心配、そして今は紅の機体と一緒にである自信が、セブンスを攻撃に移らせた。
「早くあいつを倒して、追いつかないと」
セブンスの左に立つ、セブンスドール専用のOSファルコンが心配する。
「セブンス、確かにあなたは強い。でもシックスドールに言われた事を忘れないで」
生身でセブンスはシックドールと相対して、大けがをした、その時に彼女が言った言葉。
「心の中にある欲望は怪物。無意識な小さな存在でも怖いもの」
ファルコンの呟きでその言葉は思い出しはしたが、銀河最高の兵器セブンスドールに騎乗している今は、まったく負ける気がせずに、強気な姿勢で敵に向かうセブンス。
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