第86話 A.D.4021.専用兵器ステングレイ
「全員着陸したみたい。被害は……ないみたいね」
クロムの操縦席コクーンと呼ばれるその場所に、五十センチ程度の小柄な少女の3D映像が映る。
「クロム! もたもたしない。次行くわよ」
へいへい、クロムがヘルダイバのOS、自機のラバーズの口の悪さに閉口する。
「なによ! その態度は。いい? 今度は負けられないの。だからあんたがしっかりしないといけないわけ! わかる? 今回はレニウムもテルルもいないだからね、脳筋のクロムも頭を使わなけりゃいけないぞ」
レニウムとテルルは戦艦サンタナで空で待機、クロムたちの回収を担当する。
自分のラバーズにお手上げ状態のクロム。
だが相性の問題だろう、ラバーズとの会話で緊張は解けた。
「そうだ。勝たねばならない。よし行こうフィフスの元へ」
セブンスドールと十二機のヘルダイバが歩行で移動を開始する。
敵の熱源レーダーに捕捉されない為に、背中のブラスタで空中を移動は行わない。砂漠の星は凹凸が殆どなく、平地を大量の砂が覆っており、風に巻き上げられた大量の砂が空中を舞い、視界も通常レーダーも索敵範囲が狭い。
十六メートルもの巨人たちの歩行、通常であればその振動はパイロットに死を与えるレベルであるが、コクーンと呼ばれる抗張力で張られた伸縮性の高い糸で柔軟かつ強固に固定された操縦席は、この程度の振動であれば吸収してくれてパイロットの脳を揺らすことはなかった。
「視界が悪いな。セブンス遅れるな」
初めての地上、しかも砂の星、うまく歩行できないセブンス。
ヴァレット戦闘プログラムをいくつか変更しながら、走行速度を上げていく。
「いじわるなクロム……あれから殆ど話をしていないなあ」
鈴々が亡くなってから、ぎくしゃくした二人の関係。
なんとかクロムに近づきたいセブンスだったが、今日までそれは叶わなかった。
「……今は戦いに集中しよう。そして戦いが終わったら、クロムに自分の気持ちを……言おう」
胸が痛くなるセブンスに緊急の報告が入った。
「こちらアルファ3、敵らしき物体を視認。映像を送る」
先行している三機、コードネーム、アルファ1、2、3.その一機からの通信だった。
「ラバーズ、映像を出して、マスキングして」
映像のごみを取り除きクリアにした画像には、こちらに近づきつつある物体が映っていた。
「照合完了。物体は敵兵器。ステングレイ。通称アカエイ。超低空型の戦闘機です」
同時に画像を確認したクロムの表情が曇る。
「アカエイが来たのか。まずいな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます