第84話 A.D.4020.鈴々の願い

 感情を露わにしているセブンスにレニウムは言葉を続ける。

「もう戦いを止められない、鈴々はそう感じた。だから……少しでもセブンスが優位になるように自分を」

 クロムが頷いた。

「一瞬だけ、制御できると鈴々は言っていた。ただ、その為には自分が死ぬしかないとも。繋がっているシグナルが途切れれば、シックスドールは一時制御不能になるとな」


 自分を助けるために鈴々が命を落とした。その事を納得できないセブンス。


「なんで!? 私は鈴々の助けなんていらなかった。自分で倒せた。だって、私は……銀河一のドール……でしょ」

 懸命に自分にいいわけをするセブンス。クロムが本当の答えを述べた。

「鈴々は言ってた。私の妹は本当は強い誰よりも。でも、まだ幼く、感情も経験もない幼い子供だから手助けが必要だ、自分で歩けるように……セブンス。鈴々の助けは必要だったんだろう?」


 セブンスは首を振って必死に否定する。

「私を助ける為に鈴々は死んだの? そんな、彼女は、彼女の死に方は、クロムと一緒にいる。そうだったじゃない、それなのに私を守る為なんて。ずっといがみあっていたのよ」


 クロムは頷いた。

「そうだ、鈴々は愛に生きる死に方を選んだ。これまではな。だが新しい王女が自分の娘だとわかり、命令に逆らえず俺たちの抹殺を指示され、自分の愛を邪魔するおまえを憎む深層意識がシックスドールを起動してしまった。無意識だった、そして後悔した、本当に俺が幸せになるにはセブンスが必要だと」


 新しい帝国の王女は事実を知らないまま、母親にこの基地全員の殺害を指示した。 

 強制的に愛する家族、クロムを殺すなんて鈴々には耐えられなかった。

 でも娘の希望、アルモニアを叶えてあげたい。それでもクロムと一生一緒にいたい。七海の二千年の愛を知る鈴々は、自由な死を捨てた。


 死と生と愛の全ての願いを叶えるために。

 娘の意思を聞き、仲間を守り、未熟なセブンスを育てる。

 自分の役割を果たす死に方を選んだのだった。


 セブンスの紅の瞳から涙があふれ出る。

「ごめん鈴々。素直になれなくて。私。もっと強くなる。みんなを守り、七海の思いも叶える。ごめんね、私なにも分かってなかった」

 レニウムがクロムに重い口を開く。


「最後は……鈴々の最後は……どうだったんだ?」

「幸せそうだったぜ。娘の意志を叶え、妹を助けて、俺の幸せを考えて……くそ!」


 途中でなぐさめを話すのを止め、壁を何度も叩くクロム。

「そんな理屈なんてどうでもいい。俺は鈴々を死なせてしまった。損得なんて無視する俺がひよった……自分が許せない」


 セブンスは左目から深い悲しみを得た、愛する人の幸せを守る為の不自由な選択に左目は涙を流し続けた。

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