第83話 A.D.4020.横たわる鈴々

 セブンスドールを呼びし、シックスドールを撃破したセブンスは、急ぎ基地に戻り、鈴々の病室を目指す。


「なにがあった? セブンス」


 レニウムがセブンスドールのドックから出て走るセブンスに併走する。

 普段ならセブンスの脚力についていくのは人間には無理だが、シックスドールとの戦いで大きく傷ついた今は別だった。


「分からないわ。でも鈴々とクロムに、なにかあったととしか考えられない」


 あの時、止めを刺そうとしていたシックドールが混乱した、セブンスは主人の鈴々に何かあったと直感していた。


「おまえがセブンスドールを呼び出し、部屋を壊した事と関係あるのか。それとその大けがは」

 片足を引きずり、精一杯走る血だらけの姿に、レニウムは心配と疑問を持っていた。


「うん、それは後で。今は二人が心配なの」

 エレベーターで病室のある棟へたどり着く。

 セブンスが部屋の前に立つと鈴々の病室のドアが自動で開いた。


「あ、そんな。こんなの。うそ……なんでなの」


 ベッドに横たわる鈴々。その横に呆然と立ち尽くすクロム。

 セブンスの姿を見てクロムがこちらを向いた。


「セブンスか。怪我は大丈夫か……」

 力ないクロムの問いには答えず、ベッドに近づくセブンス。

「鈴々……ねえ、起きてよ。前は驚かされたけど、今度は洒落にならないよ。ねえ! 鈴々!」


 横たわる安らかな表情の鈴々。

 動かない鈴々に予感があたり、最悪な状況に言葉を失ったセブンス。


「鈴々は死んだ。さっきな」

 クロムの淡々とした言葉。


「なぜ? どうして? クロム!? あなたがいながら」

 セブンスがたまらず叫ぶ。

「おまえを助ける為だ。シックスドールのコントロールと言っていた」

「シックスドールは私が倒したわ!」


 クロムは力のない目でセブンスを見た。

「動きがおかしくなかったか? あのマシンと戦って勝てるドールはいないと鈴々は言っていた。一度、殺戮モードが作動したら、もう止められないと」


 セブンスの満身創痍を見たレニウムが鈴々に語りかける。

「そうか、それでショックを与えるために、セブンスに勝機を与えるために……そうなんだな鈴々」


 セブンスがレニウムの言葉に強く反応する。

「ちがうわ! あいつは私が倒したの。確かに苦戦したけど……鈴々が死ぬことは無かったの! 一人で倒せたのよ!」

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