第78話 A.D.4020.死を操るドール

「シックスドール」消されたナンバーズドールの名。

「え!?」その名に驚くセブンスに追撃態勢に入るシックスドール。


 素早く蹴りこんだ右足の黒いハイヒール。

 レッドソールの色が空中に赤い円を描く。


 ハイヒールを左手で受けながら、その破壊力を察知したセブンスは自らはじかれ、威力をころした。


「ふむふむ。戦い方もなかなかだな。対人戦は慣れてないと思ったが。やはり七海の左目の力が働いているとみえる」


 セブンスの動きに満足そうに頷いたシックスドール。

「つぅ、このパワーとスピード。私を凌駕している」

 距離を取って立ち上がったセブンスの言葉にシックスドールが頷く。


「ナンバーズの誇りが傷つけられたかな……心配するな私はドールではない。おまえが持つ、究極破壊兵器セブンスドールと同様の破壊兵器。死を操るシックスドール」


「人間型の破壊兵器? では本体のシックスはどこにいるの?」

 クク、冷笑したシックスドール。話し方も冷たく変わる。

「そんなの、おまえが知る必要はないんだ。ここで死ぬのだからさ。私に破壊されるのだから」


 ふん、気合を込めてさらに速度をあげたシックスドール。

 右、左と拳をセブンスにめがけて撃ち込む。


 その速さと破壊力を察して、防御はせずに回避に集中するセブンス。

 長い儀色の髪が宙を舞い、死を纏った拳をギリギリでかわし続ける。


「本当に素晴らしい。これで感情のコントロールができていれば……なあ、セブンス!」

 セブンスのあがきに嬉しそうなシックスドールは、攻撃速度はどんどん速くなっていく。


 ついに驚異の速度をかわす事ができずに、顔を守った両手に拳を受けて、損傷を受けるセブンス。

「手の甲にひびが入ったみたいね。これでは柔は使えない。この相手は強すぎる。さすがシックスの破壊兵器ね。戦うのは無理かな……まずは外へ連絡をとらないと」

 セブンスが被害を確認していた時、紫の唇が動く。


「セブンス。究極なドール、でもパートナーの紅のマシンがなければ、私にはかなわない。対ドール用に作られた私にはな」

「べらべら、よくしゃべる破壊兵器だこと」

 言い返しながらセブンスは壁を蹴って、勢いをつけて右ひざを叩きこむ。

 

 だが、シックスドールは右手で簡単に受け止めて、そのまま力を込めセブンスの膝を砕く。

「ぐっ」

 思わず声を出したセブンスを勢いよく壁に叩きつけたシックスドール。

「損傷が激しいなセブンス。さて、これで逃げる事もできなくなった。まずはおまえを壊してから、この基地に残る反乱軍を一人ずつ殺していく。勿論おまえの愛するクロムもな」


 血の海に沈むセブンスの目に戦いの意思が現れた。

「く、そんな事はさせない!」

 血みどろでよろめきながら立ち上がったセブンス。入口に目をやる。

 (あそこから出るしか)セブンスの行動を呼んだシックスドールが首を振る。


「むだだセブンス。この部屋は私がハッキングしてロックした。おまえが壊れるまで誰も入ってこないし、カメラは眠っているおまえを映している……ああ、すごくドキドキする……銀河一のドールを破壊するなんて……嬉しいよ、クク」

 紫の唇はこれから起こる破壊行為の興奮を伝えていた。

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