死神シックスドール

第77話 A.D.4020.死神

 自室に戻ったセブンスは自分の感情を整理しようとしていた。


 レニウムのチームに自分の意思入り、生みの親と姉妹と戦い、結果は鈴々に大けがをさせた。

 そして今、国レベルの戦いは一方的に終わり、数万の兵士が殺された。

 自由を得るのに、感情を獲得するのに、今度は何を傷つけ、何をなくすのか。

 帝国でつくられたナンバーズドール。その強大な力と迷いのない意思。

  姉妹たちが持つ自分にはないものに、セブンスは自分がとても弱く思えて、心細くなった。


「ふぅ。クロムの部屋でも行ってみようかな」


 鈴々が瀕死の重傷になったは、クロムは彼女の所へ足げなく通っていて、セブンスとの接触は少なくなっていた。クロムが好きだと、強く認識させられた前の戦い。


 でも、自分の想いなど遥かに越える鈴々の死にざまと愛。

 セブンスはクロムに近づくのが心苦しかった。

 せめて鈴々が回復するまでは待とうと思っていた。

 クロムの部屋に行くのは諦めてベッドに座った時に、来客を伝えるベルの音がした。


「はーーい。どうぞ入って。コンピュータ扉を開けて」


 セブンスの言葉で部屋の扉が自動的に開き、一人の女が入ってきた。

「え? あなたは誰? 見たことないけど」


 白いブラウスに彩度の低い赤茶のミニスカート。この基地で見かけたことはなかった、うつむいたまま無言の女。

 セブンスが再び要件を聞くと、整った人形のような顔をあげて口を開いた女。


「望みは……アルモニア」

「え!?」

 さっきの放送で女王が口にした言葉を発した女は、同時に大きく踏み込みセブンスの顔をめがけて右拳を撃ち込む。瞬時に回避するセブンスはベッドに飛び込んだ。


 人間を遥かに超える反射神経のドール、しかもシルバが作った究極のナンバーズである、セブンスの頬をかすめた拳は壁にひびを入れた。


「残念。さすがにセブンス。出来損ないでもナンバーズドールか……クク」

 

 見知らぬ女は薄笑いを浮かべて、次の攻撃に入ろうとモーションを起こす、その姿は人間の女だが、表情がない美麗な顔に均整な体系でドールであることが分かる。


 ベッドから左に回転しながら立ち上がったセブンスの、頬の傷から出た血を拭いながら呟く。


「あなた、人間じゃないのね……ドール。でもその力は私達をも越える……何者なの?」


 特別なドールであるセブンスに傷をつけた女は、紫に塗られた口紅、青いシャドウの目をセブンスに向けた。


「はじめまして。セブンス。私の名前はシックスドール」

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