第76話 A.D.4020.機神エイトドール

 エイトドールはセブンスの妹エイトが持つ超兵器。

 円盤型で外苑部に十二基の巨大な核融合炉を持ち、その無尽蔵なエネルギーで、数百もの攻撃衛星を操る事が可能な銀色の巨大な要塞。

 巨大要塞の内部は百人を越すオペレーターが存在し、その全てが戦闘補助の為のドールだ。

 透き通るフロア調度品の全てが光り輝くクリスタル。

 一段高い場所に他を圧倒する力と美しさを持つ、一人のドールが座わる。

 意志の強そうな大きくて黒い目、髪は青い色。毛先にカールがかかったミディアムボブ。立ち上がったその姿は小柄だが、どこかセブンスに似ていた。最新のドールであるエイトが命令を下す。


「反乱軍を攻撃せよ。アルモニア、調和を得る為に。王女の願いをかなえるために」


 八百もの攻撃衛星が光に包まれる、ブラスタ砲がフルパワーで一斉に撃ち出され、数百もの光の束が反乱軍へと延びる。


 突然のエイトドールの出現に驚いた反乱軍だったが、即座に迎撃態勢をとって反撃に出た。

 だが、戦いは長くは続かなかった。

 セブンスとの闘いの時とは違い100%の力を制限なく使う、完成形の宇宙要塞エイトドールは凄まじい力を見せた。


 二時間後に反乱軍は壊滅し、残った艦艇は撤退を開始した。


 自由軍基地でクロム達は圧倒的なエイトの力と、反乱軍の主力部隊の壊滅を見せられて呆然としていた。

 やっと、テルルが口を開いた。

「なに今の。あたしたちと戦ったエイトは全然本気じゃなかったのは分かるけど……あんなのないよ……反則的な強さだよ!」


 艦隊の壊滅にうなだれるレニウム。

「首都星の強襲作戦は皇帝の暗殺が目的だった。目的はほぼ達成したのに……なんという力なんだナンバーズドール……我々は戦力を失った」


 くそ、壁に拳を叩きつけたクロム。

「たった二時間で何人死んだ? これもシルバ、おまえの親父の計画かよ!?」

 あまりの出来事で冷静さを欠く仲間の怒りの言葉に戸惑うセブンス。

「ごめんなさい。わからない。でも、フィフス姉さんとエイトがあそこにいて、この結果になった。確かにお父様が関係しているとしか考えられない」


 セブンスの言葉に続き、テルルが皆が聞きたくない言葉を発した。

「……もう終わりなの? 私たちはすべてを失ったの? これからどうするの?」


 誰も答えられなかった。

 沈黙が続いた後、鈴々が口を押え苦しそうな表情を見せた。

「鈴々!? 大丈夫か? みんな、ここはいったん解散する一時間後に俺の部屋に来てくれ」

 レニウムが鈴々を気遣い、部屋からの全員の退出を促した。


 元気なく全員が部屋から出ていくなか、一番最後に部屋を出るセブンスに聞こえたうめき声のような鈴々の声。

「アル…モニアを…望む…そう…なのね」

 不思議に思いを鈴々見た、セブンスの後方で扉が閉まった。

 

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