第75話 A.D.4020.アルモニア
「死を操るだと? 物騒な二つ名だな。想像するに暗殺専門のドールといったところか」
レニウムが初めて聞くドールに思いを寄せた時に、病室のディスプレイに美麗な青い瞳の少女が映った。
「だれ? こいつ?」
テルルの言葉に、あきれながら答えるレニウム。
「おいおい、銀河帝国の第一王女だろ!? 知らないのか?」
ぜんぜん、とテルルとクロムが首を振る。
「まあ……おまえらは野生児だから政治は興味ないか……だが、この緊急放送は……自由軍が迫っているのに」
疑問を浮かべるレニウムの前で放送は続き、王女が話し始めた。
「私は争いは望みません。ただし反逆者も許しません」
鈴々の病室のディスプレイに映った少女は、まだ幼さが残り銀色に輝く髪は足元の近くまでストレートに伸び、吸い込まれるような青い目、真っ白な肌。
漂う気品は帝国の王女であると、誰にでもわかるほどであった。
王女の演説を聞きながら、テルルが自分の端末で現在の状況を収集。
「あっ、みんなこれ見て! マジですか!?」
全員がテルルのハンドヘルドPC画面を見た。
そこには反乱軍によりエール十四世が殺された事、第一王女エルセルが即位して第十五代皇帝になった事が表示されていた。
「わが軍の作戦は成功したのか。しかし、手ごたえがなさすぎる。帝国内部で反乱でもあったのか?」
レニウムの呟きにテルルが答える。
「帝国軍が動いた様子はないよ。だいたい首都星には軍が殆どいない」
全員が疑問を持つ中、王女エルセルは言葉を続ける。
「私は変革を望みません、先代王が計画したドールへの人間の移行計画は白紙とします。人は自然に生きるべきです。ドールに魂をもたせるなど神のルールを逸脱してます」
女王が右手をあげるディスプレイが空中に表れた。
「私が望むのはアルモニア。すなわち調和です。先ほどから述べているように私は争いは望みません。しかし調和を崩すものは容赦しません」
女王の傍らには首都星を目指す反乱軍の大部隊が映った。
「さあ、世界にアルモニアを。私の願いを叶えなさい」
女王の言葉に鈴々が呟く。
「あの子が望むものはアルモニア……」
聴覚が優れたセブンスが振り返った時、首都星の衛星軌道上に巨大な光の球が現れた。
ジャンプしてきたのはセブンス達が苦戦した、帝国の最新兵器エイトドールだった。
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