第74話 A.D.4020.忘れられたドール

 ディスプレイの向こうのフィフスは嬉しそうに微笑む。

「わかるよ。意識する必要などない、自分への意識はネットから感じるのさ。特に敵意はね。それにあんたらには興味がある、セブンスもいることだし」

 クロムがこちらに話しかけるフィフスを見た。

「やっぱりのぞき見してんじゃないかよ。フィフス。おまえがいない前線基地はもらうぜ」

 フィフスは納得したように頷く。

「嘘はいけないなクロム。反乱軍が首都星に向かっているのは知っているよ。まあ、それはどうでもいい事だ……まっているよ。本当の敵はあんた達だ。他の有象無象な者は興味ないからね」


 現在、大軍勢がフィフスがいる首都星に向かっているを知っていても、微動だにしない。

「心配しないで今は身体を休める時だ。完全な状態で向かっておいで、フフ」 


 真っ赤な唇を手で押さえ笑うフィフスに、鈴々が視線を下げるセブンスを見た。


「フィフスに圧倒される必要はないよセブンス。あなたは……わたし達の仲間なの」


 セブンスはおかしな感覚に捕らわれた。

 自分の姉妹が自由連邦を苦しめ、クロムの兄まで殺してしまった。

 心が壊れそうな自分を鈴々が仲間と認めてくれた。

 大きな感情の波を受けて全員に伝えるセブンス。


「わたしはドール生まれたばかりの人形、心なんか持っていなかった。みんなと一緒に戦った時に初めて、死にたくない、そして死なせたくないと思った。その時わたしも生きていると思った。死に方を選ぶ、その事がどうゆう事なのかは鈴々から教えられた……みんなと一緒なら、わたしは戦える。そして新たな感情が生まれる、今はそう思いたい」


 鈴々がセブンスのもどかしい言葉を聞きながらため息を吐く。

「だからさあ、仲間だって言ってるのに! おばかな人形ね~~まあいいわ。でドールズは何人いるのセブンス? 今回の作戦で首都星にいるフィフスを倒せばもう大丈夫なの?」


 鈴々の言葉に忘れられたドールを思い出すセブンス。

「八人いると聞いたけど、私が知っているのは妹のエイト、そして六人目のドール。シックス……でも記録にないの。シックス姉さんは壊れたってお父様は言ってた」

  腕組をして顎のあたりを触るレニウムがセブンスに聞いた。

「シックス!? こちらのジャーナルにも情報はないな。セブンスは見た事がない、六番目のドール?」


「ええ、シックス姉さんには会った事が無い。わたしが目覚めた時には廃棄されたと聞かされた……ただ、死を操るドールの二つ名を持っていたと聞いたわ」

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