第72話 A.D.4020.戦わない理由

 クロムの怒りにも表情を崩さないずレニウム。

「クロム焦るなよ。戦えるさ。俺はこの戦いで決着はつかないと思っている」

「決着はつかない?……どうゆうことだ?」

 レニウムを病室の壁に投げつけ、クロムはディスプレイのフィフスを見る。


「フィフスにうちの兵士が何人殺されたと思う? どういう理由か分からないが、あいつは前線基地を離れ首都星ではしゃいでいる。作戦があったんだろう? 俺たちがセブンスを奪回する作戦の前から。俺たちが鈴々の回復を真から祈っている時も……おまえは作戦の進行を知っていたんだ!」

 クロムに叩きつけられた壁から、身を起こし襟を正したレニウム。

「ああ、知っていた。今回の作戦は半年前の前線基地での敗戦から始まっている」

「なんだと……」クロムがレニウムへ再び詰め寄る。


「レニウム、おまえ、まさか、あいつの事で……」

「ああ、そうだ。兄貴を殺された単細胞のお前を出撃させない為に、うちのチーム全員を出撃不可能と上層部に報告した」

「俺のせいだと言うのか? 俺がまともに戦えないと思っているのか?」


「フィフスに殺されたクロム・セカンド、自分の兄の敵を取るために、おまえは必ず無茶をする。熱があり過ぎるんだ戦士としてな。今回のセブンス奪回でそれがハッキリした」


「どこがだ!? 俺が命令違反でもしたか?……優秀な士官であるレニウム大佐の指示を違えたか?」


 腕を大きく広げ、レニウムに感情をぶつけるクロム。

 レニウムのチームが帝国本国への総攻撃ミッションに参加しなかった理由が、自分にあるとことクロム自身は納得いかない。


 興奮するクロムを冷静に見ながら、言葉を続けるレニウム。

「おまえは俺の指示に従い、結果、誰も失わずにセブンス奪回を果たす事が出来た。さすがアウローラのトップガンだよ」

「では、なぜだ? なぜ今回の戦いを放棄したんだ!」

 感情を露わにするクロムをレニウムは静かに短く答えた。

「俺は……おまえを失いたくない」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る