第68話 A.D.4020.新女王誕生
全てに色彩が違った。落ち着いた数千年前の調度品が置かれた部屋が写った。
一目で高貴な者の住処とわかる部屋の中央に立つのはまだ幼さが残る少女。
銀色に輝く髪は足元の近くまでストレートに伸び、吸い込まれるような青い目と真っ白な肌。漂う気品からディスプレイからでも、高貴な生まれと育ちを伺う事ができた。
幼さが残る少女が銀河全土に語りかける。
「国民のみなさん。帝国軍の戦士達と反乱軍の兵士達に呼びかけます……私は帝国第一王女エルセルです」
十六歳になったばかり少女で、帝国軍第一王女が自分の意思を語る。
「先ほど流れたニュースは見ていただけたと思います。非常に悲しく非常状態をまねく事になりました」
少女としての可憐さと王女の威厳を合わせ持ち、訴える言葉さえも麗しい。
「父エール国王が崩御されたました。速やかに銀河帝国の第三条に基づいて、王位継承者として、私がここで任を継ぎ、私エルセルが王位に就きます。これは元老院からの承認済み事項です」
王女の言葉を聞きながら、防衛軍のリーダーであるシュティレはラバーズに確認を怠らなかった。
「ラバーズ、王が亡くなったのは本当か? それと……あの王女は本物なのか?」
ラバーズが収集中の情報の検討を進めていた。
「王ですが王族の認識信号が消えました。消失時間は先ほどの画像とリンクします。また王女ですが、身体的な情報と送られてくる、王族の映像に必ず含まれる認識用のシグナルは本物です。また現在流れている放送は国営TVで、画像の加工の様子は見られません」
すべてのデータを確認し、足りない部分は自己判断を加えた最終的なラバーズの結果報告が出た。
「王は反乱軍の攻撃で崩御。現在、即位を宣言する女性は第一王女エルセル様。元老院からの認証も発行されています。よって、主張どおり現時点で彼女が帝国の主、新しい女王です」
ラバーズの説明を聞いていたシュテレイが悩ましい顔をしていた。
「王の崩御を知りフィフスは戦闘を保留しているのか? 指示した王が崩御したので新しい女王の命を待っている? だが……あまりにも手際が良すぎる。元老院の許可がとれて銀河中への放送もスタンバイしていた。やはり、シルバの策略か。そうなら女王は操り人形で、傀儡政権が誕生した事になる」
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