第66話 A.D.4020.フルアーマ装着

 四機めの超大型輸送機アーバンウェイが急速降下してきた。

 床が開き大型の装甲アーマを射出準備の為に、底のハッチが大きく開く。


 レーザー誘導がシュティレの乗るヘルダイバから送られ、合体体制に入った。

「合体シーケンス正常、アーマ減速開始、当機の上部装甲を射出、コネクタリフトアップ」


 ラバーズは合体シーケンスが正常に行われている事を報告。

 ヘルダイバの上部から誘導ビームが、輸送機のアーマに送られ、正確にドッキングを開始。

 

 衝撃のあと機体が揺れて、局地戦用フルアーマの装着が終わった。


 まるで昔の西洋の騎士の鎧のよう、重く分厚い鎧姿に、背負った大型のビーム砲が二門。肩や腹部、腕にもミサイルポットを備える。

 自国の基地を防衛するための砲台として、想定されて設計されたヘルダイバのオプション。

 

 フルアーマ用に操縦室の再起動が行われ、重火器迎撃用バレットが作動開始する。


「見てろフィフス。俺の名前を忘れられないように刻んでやるからな」

 勝てない。そんな事は分かりきっている。


 だがシュティレは高揚感をもってフィフスに相対していた、唇には強敵と戦う喜びさえ表しながら。


 フィフスドールの内部からもシュテレイの決意が見てとれた。

「あらら。まだやる気なの。絶対に勝てないのにさ」

 フィフスドールの小柄なパイロットのリンが呟く。


「やつは古強者。殺すのは惜しい気がするほどだ」

 シュティレの戦う意思を確認したフィフスがリンに返す。


 同じく正面スクリーンを見ていた、アイアンサンドがフィフスに問う。

「あのシュティレっていう大佐をフィフスは、かなり気に入っているのだろう? いいのか今やってしまって」


 これ以上やる必要がない、少し非難の意味が込められったアイアンサンドの言葉に、操縦者のリンが続いて話す。

「ふーーん。フィフスが気に入るなんて、めずらし! でもさ、だからこそ殺すんでしょ?」

 二人の言葉にフィフスは珍しくまじめな顔をしていた。

 そして横を向いて、非常用のシートに固定された、父親のシルバに答えを委ねた。


「ねえ、お父様。そろそろかな。戦いたくない感じもする。このまま殺しちゃてもいいけど。でもさ計画があるんでしょ?」


 戦闘中に全方向に強烈な動きを見せるフィフスドールに、身体を揺さぶられフラフラ状態のシルバが弱った声を出す。


「ふぅ、あ、ああ、もういいだろう。これ以上はな。おまえ、あの戦士とラバーズをもったないと思っているだろ。その言い訳が欲しいわけだ。だから私に聞いたんだろ? 計画のせいにする為にな、クク、困った奴だ。だがそれでいい」


 自虐的な笑いフィフスは否定しなかった。

「もっと、正式な場所で堂々と殺してあげたいよね。歴戦の戦士はね。もったいないのさ、華々しく散った姿を見せてあげたいじゃない? 鮮烈に散り記憶に散るのは戦士の喜びだから」


 補助席にガッチリ固められているシルバが頷いた。

「フィフスの美意識は科学者の私にはわからんが……まあ、そうなら、この辺でいいだろう。頃合いだ」

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