第65話 A.D.4020.隊長の覚悟
シュティレの予想は当たっていた。
フィフスドールは回転を早め一番高い建物を、縦方向にコマのように上り始めた。
一瞬、身構えた上空のスナイパー達だったが、高層の建物の上からでも反撃を受けないのは、計算済みで高度をそのまま維持した。
建物の先端まで駆け上がったフィフスドールは、そのまま上空に飛び上がり、反撃可能の範囲にギリギリ入り込む。
「まずい! 全機、上空に避難せよ!」
シュティレの命令より早くフィフスドールから、ワイヤーケーブルが一番近づいていたヘルダイバーに打ち込まれた。
ワイヤーにからめとられ動きが鈍った機体に、回転しながらフィフスドールが激突。装甲を砕かれところにフィフスドールからの、バルカン砲が数千発の実弾を撃ち込まれ、炎を上げて墜落するヘルダイバ。
撃墜した獲物を足場に、さらに高く飛び上がったフィフスドールの射程に残り三機が入った。同時に数十発の誘導ミサイルが発射され、二機が飛行ユニットを破損して墜落。一番離れていた機体は慌てて離れるのも、フィフスドールの最大射程距離の武器である、電磁レールガンで粉々に粉砕された。
四機のスナイパー機を一瞬で沈めたフィフスドールは、ビルの屋上に落下してダメージを軽減、その後地上へと降り立つ。
制空権をうしなった、このままでは残った地上のチームも蹂躙されると、シュティレは即座に撤退命令と、新たな命令をラバーズに命じた。
「全機撤退。局地戦用フルアーマを装着準備」
シュティレの言葉にラバーズが疑問を投げる。
「その装備では攻撃力、防御力は上がりますが、機動力をほぼ失います。本機が脱出できる可能性がなくなります」
パイロットでラバーズの主人であるシュティレは冷静に答えた。
「いいんだ。このままでは全滅だ。私が少しの時間でも抵抗できれば地上部隊は逃げられる可能性が上がる」
先ほどまでとはうって変わって、穏やかな言葉でラバーズに語り掛ける。
「ラバーズおまえは私と一緒に時間稼ぎに付き合ってもらう。すまんな」
死を決意した主人にラバーズは嬉しそうに頷いた。
「はい、お供しますシュティレ。緊急召喚アーマー転送シーケンス起動します」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます