第64話 A.D.4020.部隊のおごり
超大型輸送機アーバンウェイは、四機のヘルダイバを搭載できる銀色の機体。
急旋回して一機の側面がオープン、ハンガーから白いヘルダイバ四機が発進する。
フィフスドールの上空二千メートルまで下降したヘルダイバ四機は、肩に装備した超大型のブラスタライフルを、遥か下に見える敵に照準を合わせた。
四機に乗るパイロットにリーダーであるシュティレから指示が飛ぶ。
「高度は二千メートルを維持しろ、フィフスドールの上昇能力は千メートルを越えないが、相手はフィフスだ、十分気を付けろ!」
頷く四人は事前にシュミレートされた。フィフスドール殲滅作戦を開始する。
フィフスドールの攻撃が届かない上空からの、スーパーライフルでのロングレンジからの直接攻撃を東西南北に展開。
四機は等間隔のフォーメーションをとり、肩に装備されたスーパーライフルに火を入れる。ライフルは核融合炉を単独で内蔵して、大気中でもその威力を維持する出力と精度を持つ。
四発の光の束が地上に打ち込まれる。
攻撃を予測した円盤型の空中戦車、フィフスドールが急旋回して射線を逃れる。
しかし、四機のスーパーライフルは射撃の度に、大気と地形、フィフスドールの動きを学習し命中精度を上げていく。
一つの光の束がフィフスドールを直撃してから続けて、他のヘルダイバのショットも情報を得て正確に命中しはじめる。
騎乗しているヘルダイバは、十六メートルもの巨大な人型兵器。
戦闘支援OSであるラーバスにより情報をリンクしており、一機が命中すれば残り三機も同様の命中率を得る事が出来る。
次々と命中する巨大な光の束に焼かれながら、逃げ惑うフィフスドールは、炎に焼かれる大きな蛾のよう。
「楽勝なんだな。フィフスドールって」
上空四機の東を守るヘルダイバの一人のパイロットが呟いた。
パイロット同士の精神はリンクされてはいないが、相手の攻撃が届かない場所からの一方的な射撃。その殆どが命中する今、四人が同様な気持になっていた。
「射撃チームはそのまま攻撃を続行。気を緩めるな! 制圧部隊発進して螺旋運動をとりながら、側面からフィフスドールを抑える。絶対に反撃円内に入るな!」
射撃チームパイロットの気のゆるみを感じたシュティレからの指示に、四人は気を再度引き締める。その横を超大型輸送機アーバンウェイが2機通り過ぎ、ハンガーが空き各々、四機、合計八機のヘルダイバが地上を目指し空中に飛び出した。
上空からのスーパーライフルにより、フィフスドールの動きは抑制され、半径500メートルの円内に抑えられてる。その周囲を螺旋階段のように回りながら高度を落としていく八機のヘルダイバ。
「超上空からのライフルによる牽制射撃により、フィフスドールにダメージと動きの制限を与え、円内に閉じ込める。そして八機のヘルダイバにより包囲殲滅。最善の作戦なはずだが……」
地上のビルの谷間で戦況を確認し、指示を出すシュティレ大佐。
「ここまではうまくいっている……だが、この不安感はなんだ?」
ほんの10分フィフスと相対したシュティレは、その戦いの発想力、実行力に驚かされた。
「フィフスがこのまま終わるはずがない」
オフラインで他のメンバーには聞こえない独り言に、パートナーであるOS、可憐な少女だけが表情を曇らせた。
先ほど、軽口をたたいた射撃中のパイロットは、倒せそうで、なかなか止めをさせないフィフスドールにイラつき始めた。強力なシールドだけではなく、こちらの攻撃が当たる事さえ計算に入れたようなその動き、そしてまったく反撃を受けない状況が、少しづつ自らの高度を下げる。
「もっと近かないと、とどめをさせない」
高度をさげる一機のヘルダイバ、そのにつられるように、残りの三機も下降する。
命中と威力がましたスナイパーライフルは、明確にフィフスを捉える。
目に見える状況の変化。
降下して距離が縮まったといえ、反撃されない高さにいる四人は、フィフスドールという、大きな獲物を仕留めることに興奮を止められない。
だが状況を見ていたシュティレは、この状況を優勢だと取らえきれなかった。
「たしかにフィフスの攻撃は届かないが、もう少し高度を上げさせるべきだな。時間がかかっても安全を優先すべきだ。ラバーズ、上空の4機に指示を出せ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます