第62話 A.D.4020.チーム招集

 体がしびれる程のフィフスドール巨大空中戦車から、激しい攻撃に耐えるシュテレイが、ラバーズに呟いた。


「……フィフスドール。巨大空中戦車。あんなものどこからもちだした!?」

 振動するコクーンの中、シュティレの呟きに、素早く分析を行うラバーズ。


「記録によると王宮の道路越し、正面のビルは先月改修されています。おそらくビルの工事に乗じてフィフスドールを隠していたと思われます」

「なぜ、そんな事が可能なんだ!? 公安部隊は何をしていた!」


 やまない弾幕を耐えながら、怒りを顕わにする大佐にディスプレイに立体で浮かび上がる少女は冷静に答える。


「シルバ卿の力でしょう。王の側近でありこの国で高い権力と信頼を得る立場である卿。情報操作は比較的簡単だったと思われます。それと、これはなんて言ったらいいか……」


 返答に困った様子のラバーズに答えを急がせるシュティレ大佐。

「それと? なんだハッキリ言え!」

「は、はい。この星、ひいては帝国の人間の慢心だと思います。強大な戦力を保有して今まで数百年も戦火にあっていない首都星……つまり」


 少女の言葉にシュティレは首を左右に振った。

「くっ、つまりシルバの言葉どおり、国を亡ぼすのは腐食で内部からというわけか?」

「そうですね……あっ大佐、きましたイーグルです」


 シュティレがラバーズの声でディスプレイを確認すると、四機の白い点が能われた。


「空中から落下中のヘルダイバ12機。我がチームのイーグル小隊が予定ポジションにつきます」


 ラバーズの報告に隊のリーダーであるシュティレは叫ぶ。

「よし! 時間は稼げた。ここからはイチかバチかだ。ラバーズ、緊急脱出するぞ!」

「はい、私達のヘルダイバを飛ばします」


 果てしなく続く、フィフスドールからのガトリングガン。

 大きな盾で受け続けた白いヘルダイバが動き出す。


 盾を前に強く押し出し、同時に移動用のブラスタに全パワーを伝える。

 大きな振動が機体に響いた。

 盾を捨てた機体に直接にガトリングガンが命中する。

 震えるコクーン、操縦席でシュティレは命令を出す。


「今だ。飛べ!」

 命令と同時に16メートルを越す巨大な人型兵器は、備えられた移動ブラスタを六機全部を点火して空中へと浮かび上がる。

 さらに後方に距離をとると予想していたフィフスドールの攻撃が、一瞬だけ外れた。だが、即座に焦点を空中に合わせてくる。


 その時、空中から四筋の光が、巨大な黒い円盤形のフィフスドールを直撃した。


 上空から落下しながらのイーグル、シュティレの統率するヘルダイバ小隊からの援護射撃だ。


「いいぞ。このまま後方のビル群まで後退!」

 シュティレの指示でラバーズは白き巨体を二キロメートルまで下がらせた。


「攻撃が甘いなフィフスドール。主人が傷つている今ならではあるが……」

 ビルを瓦礫にしながら強制着陸を試みたシュティレが、わが身の幸運を呟いた。

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