第61話 A.D.4020.鋼の騎士たち
ヴァレットはパイロットがシステムに自分で組み込み、より自分にあった行動をするように調整され、それが機体の癖や特徴にもなっていた。
今回のヴァレットの選択は「ミサイル全弾の一斉発射」だった。
十二の弾頭がヘルダイバの肩から放射状に放たれ、一点を狙った。
全ては一瞬だった……。
打ち出されたミサイル、その全てが打ち落されたのも……そして白いヘルダイバが動いたのも。
空中で次々と打ち落とされる放ったミサイル、その事は予想済みのように白いヘルダイバは、背中にしょった大型のランスを抜き放つ。
西暦四十世紀、全ての兵器は光学のシールドと、超密度の重原子の金属により装甲を覆われている。紀元前行われた戦い。
闘技場に立つグラディエータが持っていた同じく剣と盾は鈍く輝く。一気に素早く執拗なランスの一撃だった。だがシュティレは失望の色を見せる。
「届かなかった……これが最後で最大のチャンスだった。衝撃のドールを破壊する、タイミングはばっちりだったのに」
大佐の騎乗する白きヘルダイバは、突き出したランスに鋼の感触を感じていた。
「ふふ、ここまで追い込まれたのは、解放軍クロム・サードとの戦い以来かな。久しぶりだよ。おまえたちは本当によくやる」
飛び散る瓦礫、舞い上がる粉塵の中で、フィフスが地面に突き刺さった巨大な盾に手を置き、シュティレのヘルダイバを見上げる。
ヘルダイバのミサイルとランスの攻撃を防いだ盾は、鋼の直径は20メートル。
対峙する白きヘルダイバより二回り大きく、フィフスを守る。
「これか……これが……」
パイロットの畏怖を込めた呟き。
フィフスの強さは聞いていたが、目の前の巨大な鋼の盾を目にして実感に変わる。
ラバーズがパイロットのシュティレ大佐に頷いた。
「そうです。これが、フィフスのドールズ。一対の破壊兵器フィフスドール」
「反乱軍をことごとく壊滅させた最凶の……ドールズマシン」
スクリーンに映るフィフスは、まるで大佐とラバーズの会話を聞こえているみたいに、視線をヘルダイバの頭部カメラに向けた。
「く、もう一撃を!」
フィフスに向かって再度攻撃を試みようとするシュティレ。
しかしラバーズの判断は違っていた。
「だめです大佐。後方に移動して距離をとってください」
ヘルダイバを越える大きな鋼の円盤型の盾に、フィフスが吸い込まれた。
ラバーズがフィフスドールの攻撃を予想して、シュテレイに後方へに移動を宣言。
「強制離脱。移動用ブラスタオン。後方800メートルへ移動します」
パイロットであるシュティレの判断を待たず、ラバーズがヘルダイバ動かす。
「く、だめか」
シュティレの小さな感嘆の後、巨大な円盤は空中へ浮かび上がり、回転を始める。
全速で後退するヘルダイバから、急速に遠くなる巨大な円盤は数十メートルの高さに浮遊する。
フィフスドール。直径20メートル円盤型で、四方に移動用ブラスタエンジンを備えた超大型の空中戦車。
逃げるシュテレイに向かってフィフスドールは、上部のハッチを空けガトリング砲を、瞬時に数千発も実弾を打ち出した。
全速で後退する白きヘルダイバのシュティレの目に、前の地面が次々と破壊されていくのが見えた。
「移動完了。完全防御姿勢に移行します」
攻撃が追いつくと判断したラバーズの指示で、後方800メートルまで下がったヘルダイバは、即時に純白の盾を構えその全身を隠す。
間髪をいれずに追いついたガトリングが着弾。
強烈な衝撃が雨のようにシュティレの体を揺さぶった。
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