第57話 A.D.4020.システムの理屈
「誰がだ?……もしかしてフィフスか]
ふぅ、ラバーズはどこまでが演技で、どこからが本気なのが、歴戦のパイロットでも分からない事も多かった。.
「あんなアバズレを気にする事はない……同じ人工的な優れた者だとしても、ドールとラバーズは違うものだ」
「それは、そう、なんですが、でも、でも、です、自由ってどうなんだろうって……ちなみにアバズレは、20世紀頃に使われた言葉で、品行が悪く、厚かましい女の人のことですね!」
「ふぅ、自由か……おまえはフィフスの何にも縛られない、あの行動が気になるわけだ」
コクン、と頷いたラバーズは、大きな瞳をパイロットに向けた。
「わたしは、あなたの為にだけにある存在です、でも、わたしが破壊されたら、あなたは新しいラバーズを見つけて、アジャストするでしょう」
「いや、おまえのバックアップは自動でとられている、この機体が破壊されたら、最新のヘルダイバをもらって……そうだな、仕方ないから、おまえをインストールしてもらう……長い付き合いだしな」
操縦席の男がパイロットになったのは20歳で現在は50歳を過ぎた。
人間の寿命が延びて50歳では若い部類に入るが、ラバーズと一緒にいた30年は短いわけでも軽いわけでもなかった。
「それは嬉しいです。でもですね、一度バックアップされたら、新しい身体にインストールされたら、それは本当のわたしなのですか?」
「それは……」
一瞬口ごもったパイロット、だがすぐにシステムの理屈を述べる。
「おまえのデータは完全にバックアップされている、今までリストアされたラバーズが問題を起こした話は聞いてない」
「そうですか、そ、そうですよね! わたしはプログラムだし、死ぬわけないですよね!」
「そうだ……そうに決まっている」
パイロットは知っていた。
リストアした機体に馴染めずに、ヘルダイバを降りた者が多くいる事を。
「ずっとあなたの側に居られるなら、わたしは自由など要りません。クダラナイ思いつきでした、ゴメンナサイ」
パイロットは言いかけて口を閉じた。
(俺が死んだらおまえはどうするんだ……)
やれ……
直後、王からの戦闘開始の指示。
「ラバーズ、状況を確認」
戦闘モードに移行した紫の大きな瞳が、冷静に迅速にシステムのチェックを行う。
「王のマスグラビティは展開完了です。動作レベルは問題有りません。ただし、不慮の事故を防ぐためにブラスタ砲の斜角は浅く取ったほうがいいです」
「了解だ」
王の後ろに立つヘルダイバが膝を落して、水平に近い角度からの射撃体勢を取った。
「斜角、目標、エネルギー全てクリア!」
ラバーズの最終報告と同時にパイロットは、右手の操縦桿のトリガーに力を込めた。
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