フィフス殲滅戦
第56話 A.D.4020.エースパイロット
ヘルダイバのコクピットから、シルバとフィフスを興味深そうに見るラバーズ。
その姿は十二歳の少女。赤いワンピースを着た彼女は、人間のような振る舞いをする。例えば今のように、戦闘に関係ないものに興味を持ったりする。
戦闘OSとしては無駄な動作だが、極限状態でしばし見られる「マシンに意思が通じない」を避ける為である。
パイロットの指示通りになんでも行うのであれば、21世紀に売られていた”窓”という古代の原始的なコンピュータのOSと違いがない。
結局はパイロットの判断と操作がなければ「何もしない、出来ない」システムになってしまう。ラバーズの擬人化システムは、今でも賛否両論有るが、殆どの場合に有効性を示していた。また、パイロットのメンタルの部分に強く作用した。
人間と変わらぬ表情や、立ち振る舞いを見せるラバーズにパイロットの孤独感は消え、もう一人の相棒に生還への責任を感じる。
一人であれば諦める場面でもラバーズと乗り越えて窮地から戻った、そんな事が実際に数多く起っていた。
エール騎士団のエースパイロットで白いヘルダイバの操縦者も、横に浮かび上がる立体画像の紫色の髪の少女には、ヘルダイバのOS以上の信頼と愛情を感じていた。
ラバースはパイロットとの相性度を上げるために、自分の姿や行動を相手の会話を通して、感情の動きに合わせて変えていく。
カスタマイズされたラバーズはある意味、人間以上の理想のパートナーとなり得た。
「何を見ている?」
パイロットが話しかけると、少し驚いて後ろ振り向いた少女。
「い、いえ、す、すみません、作戦に影響を与えたでしょうか?」
パイロットは首を振った。
「いや、今のステータスは待機中だ。ただ、おまえが何を見ているか気になっただけだ」
緊張した表情をしていた少女は笑みを浮かべた。
「は、はい、銀河一の科学者と衝撃のドールを見ていました!」
「そうなのか? どちらもラバーズには興味が無いと思うが……?」
雑談をしながらいつでも攻撃できるように操縦桿を握るパイロット。
サポートを続けるラバーズ。
「は、はい、え、えっとですね、わたし達ラバーズは、あなたの、ヘルダイバの、パートナーですよね」
目の前の少女の言いたいことが分からない、パイロットは聞き直した。
「それは、そうだが……おまえは他にも言いたいことが、あるんじゃないのか?」
「えーっと、ですね、そうなんです、それは……でも、こんな考えは」
白い機体の肩に金の荒鷲とA(エース)を描くパイロットは、有事に王の一番側に居る者であり、冷静沈着であり特別優秀な者。
物事の意味の理解も早いし行動も早い。だからこそ、育てたラバーズは優柔不断でおしゃべりで、注意力散漫な少女だった。
自分の最高のポテンシャルを出すのは、自分と同じ性格で同じ能力の者とは限らない。
違うからこそ、新しい見方や、本当に正しい正解にたどり着く事が出来る。
はっきりしないラバーズにパイロットは少し強い言葉を発した。
「だからなんだ、はっきりと言え」
「で、でも、戦闘スタンバイ状態ですよ、あそこの二人は超、超、超、3つは必要な危険な人物なのです」
「だから……早く言え!」
「は、はい、えっと、どんな気持ちなんだろう……そう思ったんです」
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