第55話 A.D.4020.良き教訓
全てはシルバの策略で反乱軍をわざとこの星に導き王を殺す。
その作戦は後半を迎えていた。
エール王は全ての兵を失ったにもかかわらず、銀河帝国皇帝の威厳を持っていた。
「シルバ卿のシナリオはここまできてしまった。我の命はそちに握られておる。だがな、それだけではこの国は奪えない。血が必要だ高貴な王族のな」
シルバの真意を探る王。
「望みはなんなのだシルバ。おまえのような成り上がり貴族は国王にはなれんぞ。貴族と国民のどちらの承認も得れないだろう。それくらいは、おまえなら分かってるはずなのに……この後には何が待っている? おまえが欲しいものは何なのだシルバ」
王が考えていたたシルバの最大の望みは国を奪う事。
「それは叶わないと王家の血筋でなければならない」と話したが、シルバの欲しいものは王の想像の遥か上だった。
「神。それも一人だけの願いを叶える、マイ神が欲しい」
「マイ神!? 舞台にはまだ続きが有りそうだ。だが我は残念ながら脚本家のおまえから、退場を告げられたわけだ」
「残念ながら。これからはあなたは必要ない」
「そうか……それは残念だ。この寸劇は面白い。それに良い教訓も得られる。王の裁量だったかな? 最初からこの建物を惜しいと思わずに、王宮ごとおまえたちを消そうとすれば……」
またその話かと軽く笑ったシルバ。
「持てる者は欲張りだな。人より貴重な物を持つあなた方には、光る宝石が無くなる事は我慢できない事。それは反省するべきものではなく、生まれや立場によっての価値観だと申し上げた」
王は意外な顔をして首を振る。
「反省? そんなものはしていない。良い教訓だと言っているだけでな……そう、全力で事にあたれば――まだ間に合う」
突然大きく地面が揺れ、王が座る玉座の後ろの巨大なステンドグラスに、ひびが入り壁ごと崩落した。
「さて、シルバ。良い教訓には良い凡例を示さねばなるまい」
王の後ろの壁が完全に崩落し、巨大な人型が姿を現した。
核融合炉三基の大出力を、ブラスタ装置で直接エネルギーに変換して動く破壊の化身。
「ヘルダダイバを用意していたのか?」
驚くシルバをスクリーンに捉えた、エール防空師団所属の白いヘルダイバ。
肩に描かれた荒鷲は金色に光る、国王直属騎士団のマーク。
全長十六メートルの巨体の右手には。大型のブラスタ砲が握られていた。
マシンウォリアのブラスタガンのゆうに一万倍の威力を持つ、ヘルダイバのブラスタ砲がシルバとフィフスに向けらる。
マシンの振動からパイロットを守る操縦席コクーン、超伝導の糸で柔軟に機体と結ばれたそこには、護衛軍のエースパイロットが座っていた。
「照準はどうだ」
パイロットの言葉に、幼い顔立ちの紫の髪色の少女が答える。
「シルバとフィフスの両名を捉えています。出力はいかが致しますか? あまりにパワーをあげると、建物と王に被害が出る可能性が有りますが」
王都のパイロットは首を振る。
「100%の出力で撃て。王がご所望だ……やつらを焼き尽くす」
「了解しました。ブラスタ砲のジェネレータにエネルギーを蓄えます。攻撃可能5秒後です」
紫色の髪の少女は人間ではない。ヘルダイバを動かすための戦闘OSラバース。
パイロットの補助を行う彼女はたくさんのスキン(姿)を持っており、パイロットの趣味で変更可能だ。
「エネルギー蓄積完了。いつでも撃てます。被害予想は王宮一階の蒸発、及び向かい側のビルへの貫通破壊」
壁を壊して突然王宮に入ってきたヘルダイバを見上げるシルバとフィフス。
「お父様。どうやら講釈が過ぎたみたいねぇ。王はヘルダイバでこの王宮ごと消してしまう気みたいだけど? でもこのままブラスタ砲をフルパワーで撃ったら、王も危なくね?」
さっきから黙っているシルバに危機迫る状況。イラッとしたフィフス。
「お・と・う・さ・ま・! さっきから何考えているの? 王が危険だから、あいつは撃てないよね?」
「いや……撃てる」
やっと言葉を返したシルバ。その返事に首をひねるフィフス。
「はぁ? だからなんでよ? 王だって死にたくないでしょう?」
「マスグラビティがある」
「うーーん、ちょっと待って……もしかしてお父様、王のために重力による完全ガードシステムを用意したとか?」
「ああ、王の要求でおまえのものと平行で作成せた。性能はペンダントの100倍。ヘルダイバのブラスタ砲なら、直撃しなければ十分防げるだろう。それが王座に仕込まれている」
フィフスは自分が身に着けているペンダントより高性能な、ヒッグス粒子を用いたシールドを王にも与えた話を聞いて、呆れかえる。
「解説している場合? お父様って本当はバカなの?…じゃあ、あの巨大なブラスタ砲で消えるのは……」
「そうだな、儂とおまえと、宮殿だな」
恐る恐るフィフスが聞いた。
「えーっと。これもお父様の脚本どおりだよね?」
「残念ながら違うな。王がここまで思い切れるとはが思わなかった」
シルバの返答に驚くフィフス。
「マジで!?」
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