第44話 A.D.4020.光を操るドール
エイトドール浮遊要塞の中はざわめいていた。
銀河最強のエイトドールを睨む紅い目に。
自分たちに危機が訪れる? エイトドールに乗船している、誰もが考えていなかった事例。
「エイト! どうしますか? セブンスドールあの紅い目は危険です。全てを見透かされているように感じます」
浮遊要塞を制御する百人余りのドール達が冷静を無くす中、エイトは静かに立ち、全員に命令を下す。
「エイトドールの核融合炉をフルパワーへ。全システムを起動。攻撃衛星へ最大エネルギーを伝達せよ」
百人のドールがエイトを一斉に見た。
「無理です。このエイトドールは、まだロールアウトしたばかりで、何のチェックもしていません。フルパワーで戦うなんて、自殺行為です」
フフ、笑い出すエイト。
「所詮……人形の集まりか」
呟きが聞こえなかっドール達が不思議そうな顔をした時にエイトが言葉を続ける。
「五分動けばいい。五分で決着をつける」
十二機の大型核融合炉が唸りをあげる。
エイトドールが、巨大なエネルギーの発生で白く光り輝き始める。
「全衛星へエネルギーを最大パワーで伝達中。エイトドールの全機能を起動しました。全コントロールをエイトへ渡します」
巨大要塞エイトドールから光が四方に弾け、八百余りの攻撃衛星に最大パワーが送り込まれた。
全ての衛星が光りを帯びて輝き出す。
宇宙がエイトドールの発する光を受けて、真白な空間になる。
「エイトドール”光を操る“ドール」
セブンスがコクーンの中で呟く。
「ファルコン軌道修正は任せる。一直線にエイトドールへ飛んで」
「了解しました。戦いに集中してくださいセブンス」
ラバーズFの答えに肯いたセブンス。
両手が握る光の制御パットに、血液のように力が循環し、コクーンの内部が紅く変わり戦闘モードに移行する究極のマシン。
セブンスの前に円形のスクリーンが開いては消えて、戦況とセブンスドールの状況を伝える。
「エンジン臨界点へ。セブンスドールフルパワー。光速移動開始」
セブンスドールの姿が揺らめき初め、同時に次元刀の重力の粒子の刃が大きく、広がり始める。
大剣に成長した次元刀を両手で握り直し、機体から紅い重力波を炎のように揺らめかせ、セブンスドールは光の矢となり、エイトドールを目指して飛び立った。
「これが最初の変化。セブンスが見せた初めての感情。何者も止める事が出来ない、真っ直ぐな人への想い」
エイトは瞳を閉じてパイプオルガンのように、衛星の操作盤を触れて、長く細い指が奏でるフーガは八百もの衛星を踊らせる。
最高までパワーを上げたエイトドールとリンクした、エイトの髪は光を湛えて白く輝く。
光は全身に届きエイトの身体はクリスタルの像のような、光を通す体になった。
直線で進むセブンスの前に、数十機の攻撃衛星が陣を敷く。
「どいて」
光の移動体から実体に戻ったセブンスドールのメインウェポン、次元刀の重力の刃は、数百メートルにも伸び粒子の幻影が、ゆらゆらと空間を流れる。
セブンスドールが、次元刀を両手で大きく振り込み、瞬時に衛星を切り捨てる。
光の残像が幾つも漆黒の空間に現れ消えていく。
前方を塞いでいる衛星が次々と切り裂かれ、そして収縮・消滅していく。
稲妻のように宇宙が光に溢れた……
セブンスに向けられた。八百もの攻撃衛星からのブラスタ砲の一斉射撃。
セブンスドール一点に打ち込まれた、巨大な光の矢に、真っ白に輝く光に包まれ、二億度を超えるエネルギーの炎に焼かれていくセブンス。
しかし不死鳥のごとく、攻撃でまったくダメージを受けない、紅き重力波の翼を纏ったセブンスドールが再び飛び立つ。
エイトはその姿を見て呟いた。
「これで一つめ……」
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