第41話 A.D.4020.たどり着いた愛しい胸
「鈴々!」
懐かしい声で鈴々の意識が戻った。
目の前に黒きヘルダイバ、クロムの機体が見える。
「ク……クロム?」
鈴々の乗る蒼いヘルダイバは完全に破壊され、コクーン(操縦席)が外に露出している。下部は無く胸から上と左手だけが残った鈴々のヘルダイバ。
破片となった鈴々を、クロムの黒い機体が抱きしめる。
「鈴々、ここまで良く来れたな」
クロムが言葉を絞り出す。
「……うん……やっぱりクロムは生きてたね。これをクロムに渡しに来たの」
左手には破壊されて動作不能になった、クロム専用のレールガン。
「そうか……助かったぜ」
クロムの言葉に安心した鈴々が、スッと目を閉じ始める。
「おい! 鈴々寝るな、目を覚ませ!」
鈴々はかすかに目を開けた。
「……もう、身体の感覚が無いの……お願いクロム。夢を見させて……楽しい夢の続きを」
クロムが鈴々を揺らす。
「夢!? 何のことだ? 起きろ鈴々!」
鈴々が再び目を閉じ始める。
「クロム、私はセブンスが嫌い……」
鈴々の意識が薄くなっていく。
「あなたを何処かに……連れて行こうとするから、私はセブンスが嫌いなの」
クロムが鈴々の意識を戻そうと叫けぶ中で、鈴々の言葉は次第にゆっくりとなっていく。
「でもね、もう……あなたの側に……居られない。セブンスが現れた……神への試練が始まる……そしてあなたと……七海の二千年の恋も……」
「何を言ってるんだ鈴々!? 意味が分からない。しっかりしろ!」
クロムの声は鈴々には聞こえない。
「みんなを頼むわね。レニウムをテルルをクロムを助けて。私の家族を助けて……セブンス」
「鈴々! 起きろ目を閉じるな!」
クロムの叫びにほんの少しだけ、目を開けた鈴々。
「私は人形が嫌いよ……セブンス、あなたが、大嫌い……なの」
鈴々は微笑み、コンソールの漆黒の宇宙を見ながら完全に意識を失った。
静かになった蒼い機体……何も聞こえない宇宙。
クロムは鈴々の機体を抱えてサンタナへ戻ろうと飛び立つ。
すぐに沢山の星が瞬いた。数百の攻撃衛星が行く先を遮る。
「見つけた。こんな所に隠れていたの? ここで死んで頂戴ね野蛮人」
巨大な浮遊要塞の一段高い場所に座るセブンスの妹エイトが微笑み、攻撃衛星にエネルギー伝達が開始された。
クロムの黒い機体が、鈴々のヘルダイバを守るように抱きしめた。
「これで終わりね。ちょっと残念。美味しいコーヒーはお預けね永遠に」
攻撃衛星の透明な操作盤に触れた。衛星がエイトの指示を受け、動き始める。
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