第33話 A.D.4020.殲滅
「クロム。敵の射撃範囲に入った。注意して」
ラバーズの警告の直後に赤い点がクロム機体を照らし、上空の防衛軍のヘルダイバから、大型ブラスタ砲の強烈なエネルギー弾が撃ち込まれた。
上昇続けながらクロムは背に装備していた、大型の盾を外し前方に構えて続くブラスタ砲の攻撃を受けとめる。
強烈なエネルギーが次々と着弾して、盾が衝撃と強烈なエネルギーで震え熱を帯びてくる。
「やっぱり、遅かったな」
クロムの呟きどおり四機が迷い無く一斉にクロムを攻撃したら、盾は持たなかっただろう。
「判断が悪いな。所詮は内地を守る軍隊。最前線で戦うおれ達とは違う」
コンソールの球形のポップアップに写る、一番左端の敵をロックオンして、ターゲットに突っ込むクロム。盾を構えたまま、接近用兵器のブラスタアックスを背から抜く。
ラバーズがクロムに代わりヘルダイバの飛行を担当。
機動ブラスタの推進力を調整して、勢いを残したまま敵へ突っ込む。
操縦を任せたクロムは攻撃に集中する、制御パットを素早く引いて、アックスを敵の機体へ振り込む。
先端が光学ブラスタで光る赤く焼けたクロムのアックスが、敵の肩の装甲を切り裂く。相手の肩口に食い込んだアックス、機体を反転し蹴りを放ち、その反動でアックスを抜くと、両手に持ち替え今度は垂直に振った。
敵の銀色の右腕がブラスタ砲ごと、切り裂かれて爆発する。
機体に大きな損傷を受けた、防衛軍のヘルダイバが静かに下降していく。
「敵のヘルダイバ脱落。残り三機。距離40KM、二時の方向」
ラバーズの戦況報告で次の機体をサーチするクロム。
体長16Mのヘルダイバの巨大な首が動く。
残り三機がクロムを包囲するように左右に展開。
サンタナの攻撃を止めて、三機はクロムへの攻撃に移るようだ。
「だから遅いと……言っているだろ!」
クロムの横をオレンジ色の光が通り抜ける。
直撃を避けるため、回避ヴァレットを組み込んだ飛行ルートで、黒きヘルダイバがフル加速を始めた。
急速接近するクロムに敵三機は攻撃システムを、ラバーズ経由でリンクし、ブラスタ砲の命中精度を上げて一斉射撃に移行した。
次々と着弾するブラスタ砲、上昇中のクロムが構える盾は高熱で溶解を始めている。
「あと少し。ここまで持てば……あとは一気にいくさ」
クロムは解け始めた盾を捨て、ブラスタアックスを構えた。
クロムは回避の螺旋運動に背中の推進ブラスタを全開、加速して敵の目前へ飛び込む。
手前の一機の射撃を右に旋回して回避したクロムは、敵の機体に触れるくらい背後から接近。リンクされた他の二機が味方の影になったクロムへ攻撃を自動的に中止するのを待って、クロムがメインコンソールの制御パットを思い切り押し込む。
黒きヘルダイバは即座に反応し、両手で持ったアックスで敵の背中を、装甲ごと切り裂き機体内部が露出した。すかさず右手に収納された、ショットガンを敵機の内部へ打ち込む。
内部から爆発を起こし、下降していく銀色のヘルダイバ。
二機を見上げたクロム、その黒き機体に二つの照準が合わさった。
ラバーズが叫ぶ。
「クロム危険! 即時回避実行!」
機体を急速回避運動させるラバーズと、同時にブラスタ砲が連続して打ち込まれる。
敵は至近距離でのラバーズを介した、二機のシステム同期リンク、しかもホバリング状態での静止射撃。その命中率は高く、高度な技術と野生動物の運動神経で、回避するクロムの制御パットを握る手にも汗が滲む。
数発のオレンジの閃光がクロムの機体に命中して、空中でバランスを崩し、次の回避運動が遅れた。そこを正確に狙う二機のヘルダイバ。
「来たよ! クロム、後方へ強制移動する」
ラバーズが叫んだ瞬間、宇宙戦艦サンタナが急上昇してきた。
サンタナと衝突する軌道に乗る、敵二機とクロム。
三機のラバーズが危険を察知し、戦闘ヴァレットの回避マクロを選択後に緊急回避する。
戦艦サンタナがクロムと、敵の二機の間を通り過ぎる時に、クロムへの照準が外れた。作戦どおりの敵の分断に、クロムのラバーズは事前に浮上を予測し、サンタナと接触しないギリギリ後ろへ下がっていた。
敵より一手早く動き出す黒き機体は。サンタナの船影に隠れ敵のサーチを逃れクロムを見失い、慌ててサーチを開始する銀色のヘルダイバ二機。
敵がブラスタ砲を構える前に、二機との距離を縮めたクロムが、コンソールの右端をタップ。ポップアップする攻撃システム用の小型キーボード。素早くコマンドを打ち込み、特殊攻撃兵器を選択。
クロムの機体の右肩の装甲がオープンされ、大きな光学レンズが横に四つ現れる。
敵の攻撃が始まる前に、クロムの乗るヘルダイバの”ラバーズ”が叫んだ。
「敵機影二機を補足、光子レンズ砲による攻撃を開始する」
クロムの肩の四つのレンズが連続で光る。光の焦点が敵の機体に写った。
核融合炉を直結して、エネルギーを光に変え、超高速で光の球体を撃ち出す”光子レンズ砲”焦点が合った敵の機体に、100万度の光が打ち込まれる。数十もの光の弾が二機のヘルダイバを打ち砕いた。
炎上しながら落下 する、二機の銀色のヘルダイバ。
「終わったぜ。帰還する」
クロムの報告を聞いたレニウムが、サンタナの艦橋でガッツポーズ。
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