超兵器セブンスドール

第31話 A.D.4020.新造戦艦

「あ、あなたこそ、何者なの?」


 自分の心の動きに戸惑うセブンスがやっと口を開く。

 セブンスの苛つきを見て、ますますクロムの腕をギュッと握る鈴々。


「私? 私はヘルダイバのパイロット兼整備士よ。そして……クロムの彼女」


 その言葉を聞いて、クロムが首を傾げる。


「彼女……そうだっけ?」

「あーーん、何言ってるよクロム。この間言っただじゃない彼女だってぇ」

 

 セブンスに一気にわき出す得体の知れない感情。


(なになんなの? このモヤモヤは……私はどうかした?)

 ガシィイン、グラ、グラ、グラ、グラ、船体が揺れた。クロムが鈴々に問う。


「鈴々! 出撃準備は出来ているのか?」

「もちろんよ、新型の整備は万全よ」

 

クロムに肯く鈴々。


「それならすぐに出るぞ!」


 鈴々の答えにセブンスを見たクロム。


「セブンス、レニウムの所へ行け。俺は厄介者を落とす」

「えっ……でも」


 新しい感情と環境に戸惑うセブンスは不安げな表情をする。


「ボヤボヤするな!早く行け!」

 珍しく強くい言葉をセブンスに投げたクロム。

 チラリと鈴々を見たセブンスは渋々頷く。


「うん……わかったわ……」

「よし。じゃあ行くぞ鈴々!」


 クロムが通路の奥に走り出す。直ぐに後ろを追いかける鈴々。

「あ、待ってよクロム!」


 なぜか二人の後を追いかけたくなったセブンス。

 その時サングラスから声が聞こえた。


「艦橋に上がってこいセブンス。今から艦内の地図を送る」

 さっき聞いたレニウムの声だった。

 セブンスのサングラスに、地図情報が転送されてきた。

 ”サンタナ”の構造が解るように、ナビゲーションシステムが働き、

 サングラスに誘導情報が表示される。


「ふぅ」ため息をついて、レニウムが居る艦橋を目指すセブンス。


 サンタナはシステムが自動化され、人手が殆ど掛からない為、人に会うことはなかった。無人の長い廊下を歩き続けると時々、船体が揺れる。


 セブンスの前に艦橋に昇る専用のエレベーターが見えてきた。レニウムから送られてきた、セキュリティ情報を入力すると、スーッと扉が開きエレベーターは上昇を始める。扉が開くとその先は艦橋だった。


 セブンスを黒髪の長身の男と、緑色の髪で小柄な女が待っていた。

「ようこそセブンス。新造戦艦サンタナの艦橋へ!」


 黒髪の男は、背丈は185CM、少しやせ気味だが、そのしなやかで強靱な筋肉が、ラフな着こなしの戦闘服からも解る。

 貴族達へ抵抗する解放軍である”自由連邦国家アウローラ”の戦士でこの船の艦長のレニウムが、セブンスに手をさしのべた。


 その手をとったセブンスが左右に首を振る。


「まったく、事情が分からないわ、レニウム」

「説明は後だセブンス。とりあえずここを逃げ出さないと。この子はテルル」


 小柄なテルルは操縦席から、緑の髪を揺らして一瞬振り返り挨拶した。


「こんにちはセブンス。私はテルル。この船のパイロット」

 サンタナの左舷が、岬に触れて大きく揺れた。


「おい! テルル! 船を安定させろよ!」

「出来たらそうしているよ。こんな地表が近い場所で、補助エンジンしか使えないのよ。出力不足で船の安定なんて出来るわけ無いでしょ?」


 21世紀の垂直離陸可能な戦闘機のように、多くの小型推進器を設置したサンタナは、巨大な宇宙戦艦でありながら、大気の中でホバーリングを可能にしていた。


 ただし、実際に極低速で空中で艦を操るのは難しく、テルルの技術の高さは解放軍の中でもトップレベルだった。


「くっそ、だいたいクロムがこんな所に向かえに来させたのが悪い。あのやろう、後でぶっ飛ばす! テルル上昇開始だ!」


「了解! 少し揺れるよ」

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