第27話 A.D.4020.待っていた罠
エイトと別れ、クロムとセブンスは街を目指していた。
二人がこの星から脱出する為に必要な荷物を取りに行くためだった。
街は貴族が住む美しい星の裏国の顔で主義も身分も無関係な、金だけが正義な場所。
店の扉が開くとマスターが牢屋のような鉄格子の中から、クロムに声を掛ける。
「よう、あんたか。例の荷物は届いているぜ」
正面の鉄格子が開き、クロムは背負った袋からズッシリ重い金塊を取り出し、店のカウンター置いて、店のマスターから代わりに大きめのケースを受け取る。
クロムは荷ケースを机の上にドッカとケースを置いて、鍵を外して蓋を開ける。
ぎっしりと詰まった品々から携帯電話のような、黒い機械を取り出したクロムは、素早く暗唱キーを押して、その機械を使って話を始める。
「レニウム、オレだ。どうやらこの辺にも手が廻ったらしい。セブンスの妹が待ち伏せしてた。すぐに向かえに来てくれ」
クロムの救助依頼を確認して、店の奥の二人が立ち上がっった。
二メートルを越える巨躯、そして青い瞳。戦闘用のサイボーグと一目で解る。
左右に分かれて、クロムとセブンスの前に素早く回り込む。
片方のサイボーグがクロムの手を通信器ごと、上から強引に押えたこんだ。
「ククク、目の前で仲間を呼ぶとはな。この周波数は、おまえたち反乱軍のものだな、現行犯だ、クロム・サード!」
薄笑いを浮かべながら、強化された強靱な腕でクロムの手を握りつぶすサイボーグの男。
「おまえこそ、簡単に姿を表していいのか? 公安のサイボーグが」
抵抗を見せないクロムに反乱軍のエースパイロットといえ、生身の人間では戦闘用のサイボーグの敵ではないと確信した男。
「くだらんなクロム。今はマシンに乗っていない、ただの人間のおまえごときに何を恐れる?」
首をほぐすように回したクロム。
「そうか物足りないわけだ……なら、こんなのはどうだ」
クロムは、自分の右腕をとる男の手を、上からさらに自分左手で押え込む。
「アハハ、クロム・サード、これはなんのつもりだ? 俺は凶悪犯の制圧が専門のサイボーグ。強化されたこの力は人間がどうなるものではない……な、なに?」
途中で男の笑いと声が詰まる。男の腕が嫌な音を立て始めた。
苦痛に歪む顔を見ながらクロムはさらに左手に力を込めて、そのまま男の腕を握り潰した。
「よかったな俺が右利きで。左だから骨折で済んだぞ。さて立場は逆転だ。たかが人間の力でな」
歪んだ腕を押えて後ろに下がる男の首を掴み、そのまま片手で持ち上げるクロム。空中で驚きの表情のサイボーグの男。
「馬鹿な、たかが人間が強化されたサイボーグの腕を砕くだと。それに百キロを越える俺を持ち上げるなんて」
片手で公安のサイボーグの二メートルの巨体を高く、そして軽々と持ち上げ続けるクロム、
「フッ、残念だな。俺はただの人間じゃない……自由連邦の戦士だ」
もう一人の男がブラスタガンをホルスターから引き抜き、即座に照準をクロムにトリガーを引く。
レーザーが撃ち込まれる寸前、セブンスがスッと走り込む。
視線をセブンスに移し狙いを変えた公安のサイボーグへ向かって、スラリと伸びた白い脚が半円を描き打ち出された。
打ち込まれた衝撃で後ろによろめく左の男は、倒れないように、グッと両足に力を込めて前に出る。
懐に飛び込んで一気に身体を回転。片腕をとって前方へ男を投げ飛ばす。
鈍い音を発して男が頭から床に落ちて、血を流し痙攣を始めた。
セブンスの戦いを見ていたクロムが、片手で吊るしているサイボーグに聞く。
「俺達の事はどこまでバレている? ここには軍の指示で来たのか?」
中吊りの男が苦しい息で答える。
「うっ、すでに公安の機動部隊が動いた。オレ達がやられたら、それが合図。アハハ、逃げ場は無いぞ、クロム・サード」
目の前のサイボーグの男が、軍用の兵器の到着を宣言し笑い声を立てる。
店の入り口に金属製のボディを持つ、戦闘歩兵、マシンウォリアが二人立っていた。
バシュン、クロムと話した男への、マシンウォリアの攻撃で頭蓋骨が蒸発した。
「喋り過ぎです、これだから人間ベースのアンドロイドは」
ニヤリと笑ったクロムは吊るした男を放る。
キューンン、モーター音が店の中に響く。
「抵抗はやめてください。指示に従わない方は射殺します」
爽やかな青年の声で威嚇するマシンウォリア。
その姿は人間の形はしているが、銀色の肌、組み込まれた武器や、コード類が露出しており、その穏やかな、作り物の顔も合わせて、ひどく不気味なものだった。
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