二千年後の出会い
第21話 A.D.4020.運命の出会い
セブンスの位置から数キロ先のトンネルの上の小高い丘の上。
一人の男が立っている。
A.D.4020.
太巻きの高級な葉巻を口にした姿は身長は190CM、体重は100KGオーバー。ヘビー級の格闘選手のような獰猛な身体の上には太い首。そしてサングラスから伺う目は力に溢れていた。
男が見下ろす道路をセブンスとマシンウォリア二台が、猛然と迫ってくる。
男は吸っていた葉巻を捨て巨大なハンドガンを抜いた。
ハンドガンはブラスタではなく、実弾を火薬で打ち出すフルメタルの弾が装着。
ピ、指でタッチし男がサングラスに供えられた、光学スキャンを起動する。
男の視界が一気に拡張して数キロ先のセブンスの美しい顔と身体を鑑賞して満足そうに笑った男は、セブンスの顔にハンドガンの照準を合わせる。
男の立つ小高い丘に迫るセブンスにトンネルが見えてくる、その瞳に丘の上の男の姿が写った時に、ドン、ドン、ドン凶暴な連続した射撃音が響く。
音速を越える速度で、マシンウォリアが空中からセブンスへ突っ込んで来る。
男の放ったフルメタルの実弾はセブンスをかすめて飛び、マシンウォリアのエネルギーシールドを突き抜け、姿勢安定用の短い羽の形をしたスタビライザーを破壊した。エネルギーシールドは実弾、剣、など物質は反射できない。
ハヤブサに急ブレーキをかけてトンネルの前で円を描き、反対側を向いて止まるセブンス。
空中での姿勢制御を行うスタビライザーを破壊されたマシンウォリアは、空中の軌道をそれ、クルクルと廻りながら音速を超える速度でトンネルに突っ込んでいく。
爆発音がセブンスの後ろから響く。しかしセブンスは、前を向いたまま視線を外さない。
その瞳に地上を走るマシンウォリア一号が写る、攻撃態勢に入るマシンウォリア。
セブンスが叫ぶ!「それを……貸して!」丘の上の男が答えてニヤリと笑い、自分の持っている大型のハンドガンをセブンスに放り投げる。
接近したマシンウォリアの赤外線照準がセブンスの身体に赤く写り込む。
男が投げた空中から落ちて来るハンドガンは、高速撮影のようにコマ送りのように落下が遅く感じられ、目の前に迫る敵に焦りを感じるセブンス。
カチャ、やっと降りてきた黒いハンドガンを掴み、マシンウォリアに照準を合わせた。シュワァァ、セブンスが立つ後ろ壁が、マシンウォリアのブラスタ砲により溶解した。
ガ、ガガ、ガ、ガン、セブンスの持つ巨大な重砲より、連射されるフルメタルコートの弾丸。
急速に展開されたマシンウォリアのシールドを金属の弾丸は突き破り、空中姿勢制御用のスタビライザーを破壊する。
しかし、地上を走るマシンウォリアには今は必要のない空中制御の翼の制御。
セブンスはかまわず全弾を打ち込むとオートマチックの銃の弾倉が空になった。
武器を失ったセブンスを見たマシンウォリアは時間をかけ正確に、セブンスに照準を絞り始める。
視線をウォリアから外さないでセブンスは、背中から抜いたブラスタガンの出力をMaxして目の前の道路を撃った。
最大パワーの光弾を受けて砕けて陥没した道路にマシンウォリアが滑り込む。
足のローラが砕かれた道路に取られ姿勢が崩れる。瞬時に背中の機動ブラスタを加熱し空中に飛び上がるマシンウォリア。
しかし、空中制御のスタビライザーは破壊されていた……空中の姿勢制御は出来ずにグルグルと回転しながら、トンネルの入り口に叩きつけられたマシンウォリア、衝撃で一瞬回路が停止した。
数秒後にバックアップで、マシンウォリアは再起動するが、その時既にマシンウォリアの頭部の制御パックに、ブラスタガンを突き付けるセブンス。
「すぐに抵抗をやめなさい。投降しなさい」
セブンスに警告を発するマシンウォリアの音声は、相変わらず爽やかな青年のもの。
バシュュウン、セブンスがブラスタガンを暴発させ制御パックを破壊する。
頭部が焼き付きダラリと手足の力が抜けて、完全に機能を停止したマシンウォリア。
「ごめんね。私はここで終わるわけには行かないの……自由も死に方も分からない今は」
トンネルの上を見上げて男に手を振るセブンスに男も手を振り返す。
丘の上に登ったセブンスが、銀河一の微笑を浮かべて男に礼を言った。
「ありがとう。助かったわ。ところで……あなた何者?」
美しき天使の微笑みを湛えるセブンスだが、その手のブラスタガンは赤い照準で男を照らす。
「おいおい……命の恩人なのだけどな」
フッと笑った男にセブンスが頷きながら、男の額に照準を合わせた。
「そうね……最近は映画でも見ないくらい”見事なヒーロ劇”だったよね」
引き金を引き始めるセブンスに慌てる男。
「わーった、わかったよ。ちょっと待て」
ふぅ、ため息をつきお手上げポーズを取った男。
「ここで長々と説明してもいいが……おまえは追われているだろ?」
ふぅ、男と同じ溜息をついたセブンスは、ブラスタガンの銃口を下げた。
「じゃあ、どこか静かで安全なところで、説明を頂きましょうか?」
「そうだな。ここから少し離れているが、おれの豪華な別荘に招待する」
男は自由になった手で腰のポケットから、太い葉巻を取りだして火をつけた。
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