第14話 A.D.4020.自由への渇望

 セブンスが飛び込んだ時に自動で灯りが点灯し、巨大なガレージに置かれたシルバの壮大なコレクションが現れる。それは人類が造ってきた乗り物の一大展示会。

 セブンスの左目に宿る星が瞬いた。


「つぅ……え? これがいいの? 凄い骨董品だよ。しかもこれ化石燃料……はい、はい、解りましたよ」


 セブンスの左目に宿る微かな星。それは誰かの”記憶と意思”が込められていた。

 セブンスの耳にマシンウォリアが急接近する音が聞こえる。

 セブンスは急いで左目の星が囁いたマシンに乗り込む。

 マシンには“GS2400ハヤブサ”と描かれていた。


 二十一世紀に造られたモータサイクル。

 S社が最後に作った内燃焼機関”ガソリン”エンジンを搭載する。

 白いフルカウルに青い風がペイントされている。

 V型6気筒2.4リッター、500馬力、最高速度404KM。

 二十一世紀のモンスターマシンのセルを回しアクセルを廻すと咆哮を上げ、二千年前に”走る為だけ”に作られたマシンが、再び目を覚ます。


 セブンスは仮想ディスプレが組み込まれたサングラスを、胸の谷間から出し掛けて呟くセブンス。

「シルバの回顧主義もここまで来ると立派だね。内燃機関、しかもガソリンエンジンって……うん? この臭い」

 ガレージの中がハヤブサの出す排気ガスで満たされ独特なガスの匂いたつが、嫌いではない事に気づくセブンスが、フッと笑った。

(これも左目に宿る人のせい?)


 クィイイイイインン、ガレージにマシンウォリアが進入、同時に攻撃を開始。

 吹き飛ぶガレージのシャッター。

 クラッチを繋ぎギアをローに入れ、セブンスがアクセルを一気に開く。

 ギュルル、ハヤブサの後輪がその巨大なパワーで簡単にグリップを無くして、空回りする。黒いタイヤのパターンを地面に残しグリップが回復した瞬間、ハヤブサは前輪をふわりと上げて一気に加速を始める。


 セブンスの前に二機のマシンウォリアが立ちはだかる。


 膝を地面につくまで落として、後輪を滑らせて一回転。マシンウォリアをハヤブサの後輪で外へ弾きだして一回転したハヤブサを素早くコントロールし、アクセルを再度開け放つ。

 爆発的なサウンドとパワーを得て強烈な加速を開始するハヤブサ。

 シルバの邸宅の入口へ向かうと閉まり始めた門。ギリギリで駆け抜ける。


 前方に長い下りの坂道が続く。

 その細いうねった道を一気に下る。

 セブンスの瞳に青く輝く、海が近づいてくる。


 青く輝く乱反射へ飛び込むように一気に道を駆け降りていくハヤブサとセブンス。青い海しか写っていなかった風景に一本の銀色の横に走るラインが現れた。


 迫る銀色のラインに数秒でたどり着いた。ラインは海辺を走るシーサイドロードだった。全身を傾けて道路を左に曲がり、立ち上がりざまにハヤブサの全パワーを解放して再び加速を開始するセブンス。


 数秒で300KMに達したハヤブサ。

 セブンスのサングラスに貼られたディスプレイに二つの赤い点が写る。後方の視界に写るのは空中を飛ぶ銀色の機体。

 マシンウォリア一号と二号。セブンスとの間を一瞬で詰めて来た。


 高速で走るハヤブサに風が幾筋も舞い上がる。

 その風と光を纏い、海岸線の道路を一気に駆け抜けていくセブンス。後方にはマシンウォリア。セブンスのサングラスの色が自動で光を押さえる濃いものから、暗視に変わり、トンネルが間近に近づいた事がディスプレイされる。

 300KMで進むセブンスの視界の先に小さな黒い点が現れ、その大きさが急速に拡大していく、スピードを維持して真っ暗なトンネルに飛び込む。


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