第8話 A.D.2040.科学は魔法じゃない

「ふむふむ」

 自分も最新科学に並べられ、少し感心したそぶりを示した哲士をチラリと見て、七海は再び思う、本当に子供みたい……と。

 でもその辺も七海が彼を好きなポイントであり行動は単純明快で嘘はない。

 だから浮気もすぐに分かっちゃう……何度かその点で喧嘩もしていた。


 こちらに視線を向ける哲士、どうやら七海の話の続きを待っている気配にまた無駄そうな、解説を続けた。


「まだ聞きたいの? もうおまえは話には出てこないぞ哲士。まあ、いいか。それでね””進んだ化学は魔法と区別がつかない”とはどちらかというと、科学の進歩を賛歌したものではなくて、未来のお話を書いた時にあまり進みすぎると、何でもアリアリになっちゃうので“科学的な検証なんて、いらないんじゃない?”みたいな皮肉が混ざった意味なの」


 哲士は七海の説明に首をひねる。

「未来は、何でもアリアリでいいだろう?」

 哲士の子供のような意見に保護者のように考えを述べる七海。

「まあそうだけど、いや哲士の考えの方が夢はあるよね。でも例えば、今の物理学だと光の速度なんか越えられない。だから一番近い銀河へ宇宙人を捜しに行くなんて、おとぎ話なわけ。だから銀河の覇権を掛けて宇宙艦隊同士が激突する、そんな事は起こらない、科学的にはね。でもそれじゃ面白くないから、色んな技術が考案される。ワープ、反物質、ブラックホールエンジン等々……でもリアルでは”有り得ない”で片付けられる」


 七海のちょっと長い話にちょっと納得がいかない彼。

「でもさ、絶対無いとは言えないだろう? 千年先、二千年先とかさ。この千年で人間はえらく文明を進化させた」


文明の進化か、七海は今の科学に思いを寄せてみた。


 たしかに人は死ななくなり人間は増えつづけている。でも、それは科学の進化によるもので、人自身の本質は変わってない。

 だが確かに科学では100%どころか、数%も世界の事象を説明できない事は、かなり前に科学自身によって証明されているから、完全にないとは言えない。


「まあ……そうかもしれないね」

 完全否定の七海が少し折れたことに、ニンマリした哲士は自分の欲望を唱える。

「オレはな、宇宙人とか会ってみたいし、宇宙艦隊とか指揮してみたい」

 七海は思う(ホントに子供みたい)

 でもそこが哲士のいいところでもある。純粋で嘘はつけない、だから七海もありのままでいられる。


「残念だけど、それはないわ」

 再びサックリと否定された七海に彼が承認を求めてくる。

「なんでさ? 宇宙艦隊って格好いいじゃん!」

 カッコいいか。哲士らしいので七海は笑顔になる。

「ふふ、あなたらしいね。銀河をワープで飛び越え、宇宙艦隊や巨大ロボットで戦う。夢がありそうだけど、そんな科学があったら人間は戦争する必要もない、その超科学で幸せに暮らす。だから現実にはそんな事は起こらないはずなのよ」


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