第4話 A.D.4020.美しき人形
「セブンス……ここにおいで」
大きなバルコニーで、初老の老人が優美な姿を見せる少女に静かに伝えた。
A.D.4020。
銀河帝国ミネルバの上級貴族で伯爵であり最高の科学者、セブンスの父親であり優れた“人形使い(ドールマスター)”として高い権力を持っているシルバの指示に少女は動き始めたその優美さをを微塵も崩さずに。
優雅な動きで静かにシルバの前に立ったセブンスはシルバの前で膝を落す。
背の高いハイヒールを履いたままでは、並んだ時にシルバの背丈を越える、見下ろすのは父であり支配者のシルバでなければならない。
自分の理想どおりの動きに納得したシルバはセブンスの手を取る。
「立ちなさい……セブンス」
「はい、お父様」
立ち上がる姿も完璧なセブンス。
真っ直ぐで銀色の腰まであるさらりと流れる長い髪。
この上なく整った目鼻立ちと完璧な表情は冷たさを感じさせる程で、大きくてルビーのような紅の瞳に長いまつげがふわりと左右に立ち、紅色の唇をわずかに緩めている。細身だが理想的な胸と腰のラインを描き完璧な美がそこに立っていた。
「美しき人形」優勢遺伝子のみで造られたセブンスには小さな星が買える程の開発費が掛かっていた。
「セブンス、おまえはフィフスやシックスには無かった人を引きつける不思議な魅力を湛えている。まさに私の最高傑作だ」
その言葉に微笑むセブンスの目の奥に光は感じられない自分の意思も。
華奢な身体を抱き寄せるシルバ。
素晴らしい感触と香り。
セブンスの首筋にキスをするシルバに、身を委ねるセブンス。
しばらく銀河最高の美しき身体を堪能した後に残念そうにセブンスからシルバは自分の身体と欲望を引き離す。
「おまえに見せたい物があるのだ」
すでに三百歳を越したシルバだがその姿は再生医療により五十歳程に見える。
セブンスの小さな細い手を取りバルコニーの大きな窓から館の奥のセキュリティが特に厳しい部屋に進む。
「さあ、これだよ」
大きな透明な水槽の前に立つ二人。
「覗いてごらん……世界を変えるものが入っている」
シルバの言葉に従いセブンスは水槽に顔を近づけた。
……気泡が弾ける音がする。
暗き水槽の中に”その者”は揺らめいていた。
美しい髪が水中を漂っていた……小柄だが均整のとれた身体、幼いがセブンスによく似た顔。
「美しいだろう? ”エイト”おまえの妹だ」
シルバは表情を崩さずエイトを見ているセブンスに苦笑いをする。
「フッ、こんな時はマインドコントロールは外したいものだな、実に味気ない。エイトが完成したら人類は最強の鉾を持つ事になる」
無表情なセブンスの手をとり、無理やり自分の胸に引き寄せるシルバ。
「おまえは私の慰みものとして、パーティの花として精々綺麗に咲いておくれ。戦いはフィフスとエイトに任せてな」
シルバがセブンスの青い光を放つドレスの背に手をかけジッパーを降ろす。
身につけているものは全ては外されて豪華なベッドに横になり、完璧な微笑みを湛えたままシルバを受け入れるセブンス。
その瞳が一瞬だけ光を得たのをセブンスの身体に夢中なシルバは気づかなかった。
セブンスの心が涙を流していた事も。
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