第2話 A.D.4020.世界の退廃
一年前……
蒼き星の金色に輝く街は美しき調べ
パーティ会場はかつて存在した“地球”という星の貴族が住む宮殿のように、煌びやかで、豪華なもの、耳に入るのは完璧な旋律。
演奏されるのは太古のシンフォニー。
数千年前の曲を奏でる楽器は既に存在しない「地球」の遺物である木製品。
バイオリン、チェロ、コントラバス、管楽器。
数千年変わらぬシンフォニー。
奏でるのは、未来の技術の結晶である美しき人形達。ドール。
かつて人間の想像力は、本やディスプレイの中で想像力をビジョンとした。
そして西暦四千年、全ての技術の終着点を見る現在、人は実際にビジョンを血と肉を使って、リアルに創りだす。エンジェル……教典に現れる、美しく聡明で永遠の存在を人の手で造る。
人の遺伝子を操作し人以外の優れた神経細胞を移植し、優秀な品質の筋肉や臓器を培養して、血と肉をエンジェルの器に詰め込む。
それは完全な人、古くは物語で語られ映像化された人々が求める理想の姿。
完璧な美の調和を持つHi-HuMan。人間がその肉体で完璧な美を纏う、それはドール(DOLL)と呼ばれ、人の手で作り出された。人間を越えるポテンシャル。エルフのような“人間の理想”の外見。だがその扱いは、ペットと同じで“どれだけ優れているか”それを競うアイテム。
どんなに優秀でも人が頂点のこの世界を揺るがす存在は要らない、ドールは誕生した時から、完全なマインドコントロールを受け、人には絶対服従が基本だった。
今、楽曲を奏でているドール達は、脳に音楽用のシーケンサーを持ち、人間を遙かに越える聴覚とリズム感を持っている。たとえ数日演奏しても、その疲労で音程やリズムを狂わす事は無いだろう。
死ぬ直前まで完璧に動作を続ける。そして自身のその身体も、完璧な美しさを持ち続ける。
豪華で煌びやかなパーティは続いていく。
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