第12話

「お前達には実力に応じた魔獣を狩ってもらう。

 できるだけ多くの素材を集めてくれ。

 だが決して無理はするな。

 お前たちが死傷しては何にもならん。

 安全マージンを確保して、確実に勝てる魔獣を狩ってくれ」


「「「「「はい!」」」」」


 キャスバル様がコーンウォリス公爵軍に指示を出しておられます。

 戦闘力の突出した家臣は、キャスバル様と共に亜竜種や属性竜を狩るのです。

 残された者たちだけで編制された部隊で、数が必要な魔獣の素材を狩るのです。

 キャスバル様が、数が多いだけの残される部隊を心配されるのも当然です。


 ですが全く弱兵だけというわけではありません。

 戦闘力は少し落ちますが、指揮能力に優れた幹部は残ります。

 全盛時からは持久力が落ちますが、魔力自体は強い老幹部も残っています。

 彼らなら部隊を上手く指揮してくれると、キャスバル様は判断されたのです。

 私もそう信じています。


「では我々は大魔境の奥深くまで入るぞ」


「「「「「「はい!」」」」」


 キャスバル様の直卒部隊は、少数精鋭とは言っても百兵はいます。

 コーンウォリス公爵家の家臣二万五千家のなかから選び抜かれた百兵です。

 その実力はジャンバッティスタ王家の精鋭に匹敵するでしょう。

 その中に私と賢女ゾーイも加わっているのです。


 正直よく王家が認めてくれたと思います。

 国内を完全武装したコーンウォリス公爵軍二万兵が行軍するのです。

 多くの貴族が危機感を持ち戦時体制をとります。

 キャスバル様と国王陛下が、イアンの治療薬の素材を集めるためだと説明しても、何の危機感も持たずにいられる貴族は存在しません。


「コーンウォリス公爵閣下。

 私にお手伝いさせてください。

 私はジェリコー男爵家に仕える徒士ジバイダの三男オリシスと申します」


「コーンウォリス公爵閣下。

 我らにもお手伝いさせてください。

 我らには冒険者として色々な経験がございます」


 私たちの行軍に、多くの貴族家部屋住みや貴族家家臣部屋住み、冒険者が協力を申し出てくれました。

 ですが完全な善意というわけではありません。

 みな仕官を目指しているのです。

 このままでは貴族や士族の特権を失ってしまうので必死なのです。


 彼らにとっては、イアンの重病もチャンスなのです。

 キャスバル様と私が、直々に狩りに出向くほど溺愛しているイアンを助けるための素材を集められたら、コーンウォリス公爵家に召し抱えてもらえる可能性が高いと、彼らなりに計算したのです。


「ならば亜竜種か属性竜を狩ってくれ。

 どのような身分の者が、何人で組んで狩っても構わない。

 狩ってくれた素材は相場で買い取ったうえに、何人何十人であろうと家臣として召し抱えよう」

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