第13話

「危ない!」


 私は思わず叫んでいました。

 叫んでキャスバル様の盾になろうとしました。

 ですが私が移動する前に、キャスバル様は属性竜の牙にかかってしまいます。

 やっとここまで属性竜を追い詰めたのです!

 こんなところでキャスバル様を殺され、状況を逆転されるわけにはいきません。


 私の必死の思いが、奇跡を起こさせてくれました。

 属性竜を探し当てるまでに、二カ月もの間戦い続けた成果です。

 大魔境に居続けた二カ月間で、私の魔力が安定したのです。

 全て賢女ゾーイがつきっきりで魔法制御の訓練をしてくれた事と、私の身体に新たな制御用の魔法陣と魔血晶を埋め込んでくれたことが大きいです。

 お陰でキャスバル様と属性竜の間に防御魔法を展開することができました。


「キャスバル!」


 賢女ゾーイがこの状況でなんの手も打たないはずがありません。

 私は奇跡的に魔法防御を展開出来ましたが、賢女ゾーイは的確な計算の上で魔法防御を展開したのです。

 キャスバル様と属性竜の間に、二重の防御魔法が展開されたことで、強大な属性竜の牙から何とかキャスバル様を護ることができました。


「アルフィン!

 魔力支援をしてくれ!

 ゾーイ!

 手足を斬り落とせ!」


 完全な命令口調です。

 キャスバル様も必死なのです。

 普段の落ち着いて優しい言葉使いなど不可能です。

 私も賢女ゾーイももう慣れています。

 亜竜種を狩り続けるうちに慣れました。

 指示された戦法も慣れたモノです。

 同じ戦法で多くの亜竜種を狩りました。

 今度はそれで属性竜を狩るだけです。


「グギャガアァァァァ!」


 属性竜が苦痛に悲鳴をあげます。

 ですが満足な結果ではありません。

 亜竜種なら、百トン級の巨大種でも手足を斬り落とせた賢女ゾーイの魔法が、属性竜の手だとわずかに傷をつける程度です。

 これではとても殺す事は不可能です。


「全員回避を優先!

 余裕があるモノだけが傷を狙え!

 流れる血を集めろ!

 はがれた鱗を回収しろ!

 わずかでもいい。

 属性竜の素材を確保しろ。

 目標は腕だ!

 腕一本切り取るぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


 属性竜の血と鱗と皮と肉に骨!

 念願の内臓を手に入れる事はできませんが、他の素材は手に入ります。

 それだけ手に入れば、イアンが助かる可能性が跳ね上がります!

 本当は突っ込んでいって、流れ落ちる属性竜の血を集めたい!

 はがれ落ちた鱗を回収したい!


 でもそんな事をすれば、キャスバル様が危険も顧みず、助けに来てくださることは、亜竜種を狩った時に思い知りました。

 キャスバル様を危険に巻き込むわけにはいきません。

 ここは我慢しなければいけません。

 回収は素早さに自信がある家臣に任せるのです。

 家臣を信じるのです!

 私は、私にできる事をします!

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