第10話
私は愚かでした。
自分勝手でした。
父上と母上の優しさに甘え、自分で何も確かめてこなかった。
キャスバル様の愛情にも気がつかず、恨んでさえいました。
今その報いを受けています。
最愛の息子、イアンを私と同じ病にしてしまいました。
ですが、後悔してもどうしようもありません!
今できる事をするしかありません。
イアンの助けになる事を探すのです!
賢女ゾーイに任せればいいというモノではありません。
文献を調べるのにも人手が必要です。
キャスバル様がコーンウォリス公爵家の全力を注いで調べてくださってますが、私も及ばずながらお手伝いしました。
何かしなければ落ち着かないというのもありましたが、カーゾン侯爵家の文献を調べるのなら、私が適任です。
キャスバル様といえど、他家の図書室に勝手に入ることはできません。
私は実家だから可能なのです。
ですが、期待薄なのです。
私を助けようと、父上も母上もすでに全ての文献を調べてくれていました。
唯一違っていたのは、賢女ゾーイの助言でした。
単独では能力を発揮できない術式でも、組み合わせて能力が発揮されるという術式もあると教えてくれました。
そういう視点でカーゾン侯爵家の文献を調べると、いくつかの期待できる術式があったのです。
それを賢女ゾーイに伝える事で、新たな複合術式が開発されました。
完全治癒できるわけではありませんでしたが、イアンと私の魔力暴走を緩和させる効果があるのです。
「キャスバル様!
アルフィン様!
新たな術式が完成しました。
ですがその術式を発動させるには、強力な素材が必要になります。
今直ぐ公爵軍を動員して集めてください」
賢女ゾーイが挨拶もなしに私室に飛び込んできました。
賢女ゾーイには特別な待遇が与えられているのです。
例え寝室であろうと。
深夜であろうと。
なにも配慮せずに入ってきていいと。
玄関を通らず、家臣の取次ぎなしに、いきなり私室に入っていいと。
朗報です!
待ちに待った朗報です!
この朗報を聞くのに、面倒な貴族に面会手続きは邪魔なだけです。
特別待遇を与えるのは当然なのです。
「待て、賢女ゾーイ。
公爵軍を動員するとはどういうことだ?
いったいどれくらい強力な魔獣が相手なのだ?」
「最低でも亜竜種です。
亜竜種でも絶対ではありません。
できれば属性竜の素材が欲しいです」
私の希望は、絶望に変わりました。
最低でも亜竜種。
本当なら属性竜の素材が必要だなんて!
そんな素材を集めるなんて不可能に決まっているではありませんか!
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