第5話
「若奥様。
国王陛下からお見舞いが届いておりますよ。
国中の貴族の方々からもお見舞いの品が届いております。
みな様が、殿様と若奥様の仲睦まじさを噂しておられると、我ら使用人の耳にも届くほどでございます」
腹立たしいことです。
キャスバルの策略が効果を表しています。
社交界ではキャスバルは愛妻家だと言われているのです!
みなキャスバルの演技にまんまと騙されているのです。
私にとっては最悪の状態です。
単に腹立たしいだけではすまないのです。
社交界にキャスバルの真の姿を暴露して、社交界を味方につけることで、子供を連れてこの家から逃げ出すつもりだったのに、できなくなってしまいました。
キャスバルの演技は完璧なのでしょう。
地位や名声を考えても、私の言う事よりキャスバルの話が信用されることは、私にだってわかります。
新たな離婚の方法を考えなければいけません。
「アルフィン、すまない。
今日の会議はどうしても出席しなければいけないんだ。
申し訳ないが側にいてやれない。
お詫びに何か買ってくるよ。
何か欲しいモノはあるかい?」
偽善です。
嘘偽りです。
きっと賢女の家に通うのです。
でも愛妻家の演技している手前、召使たちの前では、会議だと言わなければいけないのです。
お土産を買ってくると言うのも、召使たちに対するアピールです。
召使たちの情報網を活用して、社交界に噂を流すつもりなのです。
今回の件で私は初めて知ったのです。
召使たちは自分たちの身を護るために、貴族家の情報を流しあって、召使を殺したり虐待したりする貴族家を避けていると。
その副産物として、貴族の噂が社交会に広まるという事を!
キャスバルはその事をよく知っていて、活用しているのです。
若くしてコーンウォリス公爵家当主として恐れ敬われているのは当然なのです。
まあ、私も、多少はキャスバルを見直しました。
考えを改めた所もあります。
彼が政務で忙しいというのは嘘ではありません。
キャスバルは私を愛しているという演技をすると同時に、通常通り政務を行うために、私の寝室に執務机を持ち込むという暴挙に出たのです!
そのせいで私は全く安らげませんでした。
病床にある私を労わる気など本当はなかったことが、この行動で分かるというモノですが、それでも朝から晩まで忙しく書類仕事をしていたのは確かです。
侍女に見てもいい書類と内容を教えて欲しいと言ったら、懇切丁寧に教えてくれましたが、私には理解できないことが多かったです。
侍女の説明では、家老や事務官に任せきりにせず、必ず確認するので、とても忙しいのだそうです。
ですが、公爵家内の政務と宰相府の政務以外の時間があるのも確かです。
それも結構な長時間、何をしているのか分からない外出時間があります。
きっとその時間に賢女と会っているのです!
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