恵憂カウンセリングレポート2

「お久しぶり。恵憂ちゃん」

「お久しぶりです。立華さん」

「極自然にお辞儀をできるようになったのね」

「はい。先生に『挨拶はできて当たり前。できない人間はかわいそうなやつ』なんて言われて、できるようになるまで、デコピンされました」

「桜井くんらしいなぁ。ここは桜井くんに秘密ね。桜井くんはここに来始めたとき、ずっと下を見てて、目線を合わせることがこわいって言ってたの」

「先生にもそんなことが……」

「あったのよ。彼にも許可はもらってるから話すわね」

「このレポート読んでみて?」


……


「先生って妹さんがいたんですね。私と同じ名前の……」

「えぇ。自殺しちゃって今はいないけどね」

「……自殺……」

「恵憂ちゃんがひとりぼっちだったのと一緒。桜井くんも長い孤独を感じてた」

「じゃあ私はその妹さんの代わりに……」

「一般的には『代償行為』っていうんだけどね。でも桜井くんそんなこと考えてないわよ」

「……なんでそんなことわかるんですか?」

「なんで……か。そこに疑問を持つのね。

本当の代償行為だったら、桜井くんの家には未成年の女の子ばかりの家になってるとは思わない?」

「う…うん。先生は『めんどくさいことは嫌い』とか『これは犯罪』とか言って、言ってるけどいつも私優先なんです。『子供は親に甘えろって』言ってくれてそんなの初めて、それが嬉しくて」


 だから桜井くん……先生のことが好きになっちゃったんでしょ?

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