お見舞いイベントは鉄板

 それは夏休みが終わりかけていた、そんな日の出来事。

「けほ…けほ…」

 なんか真尋が朝からずっとたちの悪そうな咳をしている。もちろん俺は病院に行くように言ったが、真尋は「寝てれば治る」と固持して部屋に引っ込んでしまった。

 そんな朝から時間が過ぎて昼になったのだが……真尋が部屋から出てこない。部屋に入ることはできる。できるが、真尋は女の子だ。多感な思春期を過ごしているわけで……おいそれと部屋に入るのはダメだろと。

 なんて考えてたら真尋がずいぶんと厚着をして部屋から出てきた。これは風邪で決定だな。

「真尋、病院行くぞ」

 真尋の細い手を握って外へ連れ出し車で病院まで行き、待合室で熱を計ったら38度だったのは驚いた。つーかこんなんなる前に相談しろよ……後でお説教だな。

 簡単な診察を終えて、真尋は風邪をこじらせて肺炎まで悪化してると言われ、俺が会計している間に寝てしまった。

 医者にはこれ以上悪化したら入院も視野に入れないといけないと注意もされたし、かわいい女の子としての危機意識のなさも叩き込まないとなぁ。

 起こしたらかわいそうだからゆっくりとお姫様抱っこで助手席まで連れて行って、もう仕方ないから勝手に部屋まで入って布団に寝かせてあげる。俺が一人暮らしをしていたときには見られなかった”女の子の部屋”にきちんと変化していたことが嬉しくて、起きてもない真尋の頭を優しく撫でてやる。このまま1人にするのは怖くて、失うことが怖くて……恵憂の手を握ったまま起きるのを待っていた。

 恵憂は暗くなっても寝ていてたままで、恐怖心が少しずつ俺の心に侵入してきた俺の……俺が握っていた手を軽く握りしめ返されて、穏やかな笑顔を見せてくれた。それがなにより嬉しくて


 ねぇ先生。ごめんね。


 と言われ真尋は……恵憂はキスをしてきた。


 なにより驚いたのは俺がそれを拒まわなかったことだ。

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