先月、鎖骨骨折して死ぬほど痛かったです
風呂上がり、換気扇の下でタバコを吸おうと思って……それを捨てたら、女の子らしいお肌のケアをしていた真尋が「とてとて」とかわいらしい足音をたててリビングにきてテレビをつけた。
「ろくに通ってない高校で友達できたの?」
「なにその嫌味な言い方」
珍しく棘があり、自分が悪いことを自覚できたので
「……ごめん」
と素直に謝ると
「友達できてない……」
こういうところが素直でかわいげがある、そんな女の子。
「俺のクラスにもう1人”特別な理由”のやつがいるんだけど興味ある?」
タバコの火をもみ消してソファーに移動する。
「んー明日考える。今日はもう眠くって」
ふわあとかわいらしいあくびをして目をこすっている。
「布団は部屋に運んであるから……」
「んーそれでね、相談があるんだけど……今日は同じ部屋で寝た……い」
「それは……」
「お風呂のときとは違うよ」
発育が良かったことを思い出してしまい……
てかこの感じ、ふたりとも赤面イベントだったのか。、
「目が覚めて『あのアパート』で先生が優しく抱きしめてくれたのが夢だったら……もう私、耐えられないよ……」
真尋が浮かべている表情は本当の絶望を知っている者のそれだった。世の中にいる女子高生が、到底知ることができない、そんな悲劇だ。
「うん。いいよ。甘えてくれてありがとね」
それを聞いて、ソファーでダラダラしてた俺に真尋はダイブしてきてお腹をスリスリしながら
「どっちのお部屋で寝る?」
なんて聞いてきた。
「まぁ女の子の部屋に入るのはNGじゃね?」
「じゃあ先生の部屋?」
なんか表情が読み取ることができない。それより気になったのは
「真尋、人と話す時は目線を合わせなさい」
「うぅぅ」
ちらっと上目遣い
ぺシット頭を軽く、本当に軽く叩こうとして右手をあげたら
真尋はびくっと反射して頭を抱えた。
あからさまに分かる。それは真尋の身を守ろうとした条件反射で……やっぱりこの娘には愛情だけでは足りない、優しい時間が必要なんだと再認識した。
まひろが俺の部屋に布団を持ってこようとして「重いよ~~」なんて情けない、女の子としてはかわいらしい声が聞こえ
「まだ使ってない布団でよかった~」
「? なんで? 重さなんてかわらんだろ」
「匂いが気になるんです!」
なんか重たい話ばかりだったから忘れてたけど、真尋だって立派な”女の子”だ。少し(いや、かなり)世間知らずだが、ちゃんと女の自覚を構築している。
そんな”女らしさ”が嬉しかった
布団を横に並べて、さて寝るかと思い真尋のことをちらっと見ると、めっちゃ顔を真赤にしていた。
「自分から言ったのに緊張でがちがちやんけ」
「先生は気にしないの?」
「緊張はしてるよ。でも俺、睡眠薬を飲んでる人間だから。だから15分で落ちるよ」
睡眠薬は飲み始めてもう10年近くだなぁ。
「えっ……もう飲んじゃった?」
「真尋が寝るまでは起きてるよ」
真尋が緊張以外の……いつもの
「先生……もしかして私ってお邪魔でしたか?」
卑屈さを出してくる。
「はぁ。もっと甘えて、もっとわがまま言っていいから。そんな真尋恵憂を邪魔なんて思わないから。」
「でも……」
「ーちょっと布団の上に座って」
「え?」
と言いつつ恵憂はぺたんと座って……俺はそんな恵憂を正面から抱きしめた。そしてささやく。
「世の中には必要のない人間は確かにいる。でもそれはその人が不運だったからだ」
次の一言は傷になるかもしれない。でも恵憂ならわかるはずだ
真尋はどっちかな?
「それは!……私が恵めれてるって言いたいの?!」
真尋は明らかに怒っていて、裏切られたと感じているかもしれない。
「真尋は明らかに『恵まれていない』ほうの人間だ。でも……、真尋ならそんな逆境をのりこえられる、そんな女の子だよ」
俺はそれだけ言って、真尋の……恵憂の顔を俺の胸に押し付けた。最初はジタバタしてたけど、30秒くらいで泣き出して、我慢していたことと、恵憂の”生な意見”を俺に言ってくれた。
助けてほしかった……先生が助けてくれてた
理解してほしかった……先生が理解してくれた
泣きたかった………先生が泣かせてくれた
全部諦めてた。だけど先生が全部叶えてくれた
だから先生に「じゃま」って言われるまでついていくよ
恵憂は甘える時、敬語じゃなくなることに今気がついた。
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