バカな高校に進学したアカウントはこちらです

 初めての教師としての仕事。ちなみに俺の担当は数学。かなり生徒には好き嫌いが激しい教科だ。だからこそ「しっかりと授業計画を作って欲しい」と言われ「昨年度のもの」をコピペしたらめっちゃ怒られたりと、バタバタの毎日。

 まぁさほど進学率(主に難関校)には気にしていないことには助けられた。

 初めての職場。初めての担任。緊張するな、というほうが難しい。いや、本当にこの仕事、大変なんですよ。


 今日から新入生は新しい学び舎に。新しい教室に。まだ見ぬ学友に期待し登校してやってくるのだろう。この時点でも嵐の気配は感じられなかった。。

 正式に俺の担当するクラスである1年9組(25人)にも登校してくるのだろう。


 ちなみに1クラスに25人というのは、私立高校としてはかなり少ない。その理由も「生徒一人ひとりにきちんと向きあう」という理念を実現させられる最大限の人数だからだ。

 先輩曰く、他の私立高校みたいに大量の生徒を詰め込んで問題発生というのが少なくなるというのは楽でいいとのこと。新人にはわからんなぁ。


 新入生の登校時間は午前8時30分、午前9時から入学式を行うのだが……現在午前8時45分。ひとりの新入生がまだ来ていない。俺のイライラも爆発寸前。ちゃんと時間通り来てくれた新入生は先輩の先生に連れて行ってもらい、俺は教室待機。

 そして入学式が終わり新入生が戻ってきた。予定通りここで下校してもらい、初日から時間をぶっちぎった『とある女子生徒』に電話したが繋がらず。学年担当(全クラス見てる)の佐々木先生に報告。一応様子見でいいとのこと。なんで俺が悪くないのに頭下げなきゃいけないんだよと不満爆発しそうな俺。


 そして次の日。朝のHRの途中で『とある女子生徒』は登校してきて、教室の外から中を見ていることに気がついた。ダメだ、キレるなと自分に言い聞かせてシカトしようと思って……俺もああやって教室の中きょろきょろ見てたなぁと思い出し、

「おい真尋。教室は入れ」

ってドアを開けてやるとコテンと尻もちをついて

「こいつが初日から時間ぶっちぎったバカだ。みんな常識を教えてあげてくれ」

と言うとクラスで爆笑。

「真尋、言い訳は?」

「寝坊しました……」

真っ赤な顔でまっとうな言い訳。


 これが4月頭の出来事。まさかこれ以上悪化するとは想像していなかったしできなかった。


 時は過ぎて5月の頭。やっと仕事にも慣れてきたころ。残業少なくなったなぁと職員室でぼんやりしてると、佐々木さんから呼び出された。完全防音で窓だけついてる部屋(生徒指導室)に連れて行かれ『とある女子生徒』の惨憺たる現状を説明された。

 

 問題その1

  出席率が3割を下回っている

   このままいけば1学期で留年が確定する


 問題その2

  7月頭(3日前)に実施した簡単な(ここ重要)数学、英語の抜き打ちテストの点数が赤点レベル

   順当にいけばこれまた留年が確定する


 問題その3

  保護者との連絡が取れない

   3者面談を予定していたが保護者も本人も欠席


以上をもって佐々木さんから「俺の」責任問題であるとし、問題解決を命ぜられた。


 夏休み前に抜き打ち家庭訪問を行う、という旨を報告した際には佐々木さんが嬉しそうに「いい若者がはいったなぁ」とにこにこしていた。いや、佐々木さんも十分若いだろ……。

 ということで俺の残業が増えた。しかも休日出勤手当てはない。

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