*大人の◯◯とBBQ
睦まじい行為が終わると、脱力するように悠は眠りに就いた。
私はそれを確認すると使用した複数のコンドームの中身を飲み込んでいく。悠の子種だと考えると、どうしても捨てるのが惜しいと考えてしまうのだ。
それに性飲の練習も兼ねている。目の前で自分の体液を飲んでくれる彼女というのは興奮しないだろうか。
うん、悠は変態だから興奮してくれそう。
「それにしてもこんな物、用意するなんて……」
興味が無いわけではない。気持ち良くならないこともない。ただ、目の前に愛しの人がいるのにそれで感じるのは屈辱なのだ。
私は悠の手によってイかされたいのだ。ただの道具にイかされるのは本望ではない。それに私の中は悠のウインナーとその肉汁しか受け入れるつもりはないのだ。
「肉汁……肉食べたくなってきちゃった」
肉汁から肉を連想してしまった。
実家にいた頃は晩御飯にBBQをよくしていた。ブタマネをするのは豚トロが好きだからだ。
しかし、BBQをするにしても重要なことに気付いた。
プレートがない。
これでは家でBBQをすることは叶わない。プレートを使いに実家に行くというのもありだが、母がいたら普段のことについて根掘り葉掘り質問されてしまう可能性がある。そうなった場合、特に悠との惚気話になると口が軽くなってしまうので、迷惑を掛けてしまう。
焼肉屋という候補もあるけど、視線が気になって落ち着かない。折角の焼き肉の味も分からなくなってしまうだろう。
個室の焼肉屋ということも考えたが、遠いし人混みもありそうだから、到着するまでに体力を使い果たしてしまう。
「焼肉したいな……」
フライパンで肉を焼くのはBBQとは言わない。プレートで肉を焼くのがBBQなのだ。
**** ****
「お邪魔します」
「準備するから自由にしてて」
突然だけど、BBQする為に私は悠の実家に訪れていた。悠は私の実家に何度も来ていたけど、その逆は一度も無かった。それに悠の両親は旅に出ているので、誰もいないというのも大きかった。
「あ、悠の部屋こっち」
長年住んでいたのだ。悠の匂いは染み付いている。その匂いに誘われるように階段で二階に登り、手前の部屋のドアを開けた。
特に特徴のない部屋だった。シンプルイズベスト。私の部屋も似たようなものなので親近感が湧いてくる。
彼氏の部屋に来たらやることは二つあり、一つ目は深呼吸。
「すーー……」
良い匂いだから吐き出したくない。可能なことなら吸い続けていたい。だけど、吐き出さないと生きていけない。人間というのはなんて脆いのだろうか。
そして、二つ目がベッドへの浸入。こちらは変態の所業だが、匂いフェチである私は自分を律することができなかった。
掛け布団を捲り上げて、いざ入ろうと思ったが良いことを思いついたので一度止める。衣服を脱いで下着姿になってからのベッドへの侵入である。
「ぁ……凄い。全方向から悠に包まれてるみたい。はわぁ……」
こうしていたら悠漬けになるだろうか。食べ物として食われたくはないが、性的になら悠に長時間味わって頂かれたい。
いや、もうこのままの状態で生涯を終わらせるのも幸せに思えてきた。ずっとこうして殻に閉じ籠っているのだ。やり残していることもあると思うが、そんなことは些細なこと。
しかし、そう上手くいかないのが人生というものだ。
「プレート準備したけど、野菜とか切ってくれないとできなかったな……って、何してるんだ」
「……」
「それに服も脱いでるし……」
「えい」
私は悠をベッドの中に引き込んで両手両足を使い絡みつく。自分の
「ちょっ……」
「このまま襲ってくれても良いんだからね。我慢は健康に良くないよ」
「……適度に誘わないと慣れが出てくるぞ」
「っ⁉︎ 野菜切りに行こっと」
慣れを甘く見てはいけない。夫婦生活の中で1番あってはならない。悠に女として見られなくなったらショックどころの話ではないのだ。
私は潔く撤退することにした。
**** ****
逃げるようにして1階に降りた私は悠の残り香を頼りに台所に向かった。
「おぉ、広いキッチン! なんか、やる気出てきた」
悠の実家に向かう道中、スーパーに寄って買ってきた食材をエコバッグから取り出していく。具材を切るだけなのに料理したくなるような空間を見ると、なけなしの料理魂に火が付く。
「包丁は……あった」
引き出しに閉まってあった包丁を取り出して、素早く野菜たちを刻んでいく。火の通りを意識して厚過ぎず薄過ぎないように。
「あ、ついでにサラダも作ろっと」
焼き野菜も良いが、ドレッシングが掛けられているサラダも焼肉に合う。肉が焼ける前の食べ物として丁度良い。ついでに肉と一緒に食べる用のレタスも水洗いして手で千切っておく。
「後はスープも欲しいかな」
卵スープとかBBQに合いそう。特売でつい買ってしまった卵が役に立った。鶏がらスープの素は無さそうだったので、冷蔵庫に入っていた、だしの素で代用。
「うん、こんなところかな」
初めて使ったキッチンだったが使い易かった。収納技とかには詳しくないので参考になるものがある。
「じゃあ、ゆうを呼びに……って、いつからいたの?」
「気付くの遅かったな」
料理に夢中していたようで、悠が側にいたことに気付けなかった。
「下着姿で料理してたから怪我とかしないか心配したぞ」
「あ、そういえばそうだったね……。言ってくれれば良かったのに。まぁ、ゆうのことだから、ずっと胸見てたんだろうけど」
「そこに爆弾があるんだから当然のことだ」
本当に胸が大好きな困った彼氏である。でも、悪い気はしない。ネットで他の女性の胸を検索されるよりずっといい。
「じゃあ、このスープ運んで」
「他のも全部運んどくから服着てこい。焼肉は油が跳ねるからな」
「それは困る」
悠を興奮させる
**** ****
台所を後にして再び2階に上がり、悠の部屋へと入る。
「っ、やっぱり良い匂い……」
このまま深呼吸をしていたいが、BBQの準備はできているので早く服を着て1階に戻らないけといけない。
「ん?」
そんな時に一つの小さな箱を見つけた。私が最初に来た時はこの箱は無かった気がする。というか無かった。私の服の下に隠れて置かれていたのだから。
「とりあえず持って行こ」
こういう類のものは勝手に開けてはいけない。プライバシーに関しては私は守る方だ。
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