第78話 可愛い本仮妻と大人の◯◯


 発情という名の暴走を何とか鎮めることができたのは日が落ちた後だった。今朝については誘うようなことをしてしまったが故に、暴走した。


 そして、今回は俺の言葉を受けて嬉しくなってしまい、我慢が効かずに暴走した。


 暴走すること自体は別に良い。由季と愛し合えるのは大歓迎だ。だが、その頻度が多過ぎると流石に辛い……。


 するなとは言わないが、一日一回にしてほしい。


 しかし、そう上手く行かないのが人付き合い……ではなく、由季との付き合い方である。


 そこで良いことを思い付いた。馬鹿正直に真正面から向かわなくたって化学の力でどうとでもなる方法を。



「頼んだぞ……」



 俺は一縷の望みを掛けて、その商品を注文して気絶するかのように眠りに就いた。




 **** ****




 翌日、速達にて注文した商品が届いた。由季にはまだバレたくなかったので今回はコンビニでの受け取りである。


 自宅での受け取りにすると、俺の名字の方で呼ばれたがっている由季が出てしまうのでバレる可能性が出てくるのだ。


 それに科学の力以外にもサプライズを用意したかった。



「コンビニに来たついでにあれも買っておくか……」



 由季と愛し合う回数が多いということは避妊具の消費量も多いということである。暴走している由季だと判断力が落ちるのか、平気で直接しようとしてくるので油断ならない。


 子作りが目的ならまだしも、世間では高校生の年代だ。流石に時期が早い。自分たちは良くても子供からしたら若い両親は不安になる。


 そのことを考えると、旅行中でのやり取りで授からなくてほっとした。妊娠成就や安産成就と言った呪詛を唱えている由季には申し訳ないが。


 レジにて化学の力とサプライズ品を受け取った後、避妊具と何かしらのアイスを購入した。その直後に由季から連絡が来た。



『早く帰ってきてね』



 その文章と共に何がとは言わないが、ほぼ丸見えの写真が送られてきた。裏垢女子でもこんな過激な写真は載せないと思うレベルである。



『送らなくていいよ』


『私の身体に興味無くなった……?』


『万が一、覗き込まれたら俺以外の人に見られるんだぞ』


『それはやだ』



 素直に由季はその写真を削除した。すぐに従ってくれたので他人に見られるのは本当に嫌なのだろう。それも他人の視線で傷付いた経験があるから余計に。



『それに、写真より直接触れ合う方がいいからな』


『……準備して待ってるね』



 やってしまった……。


 どんなことをすれば反応してくれるのか、何度も試してきた。今までは一方通行だったから良かったものの、相互関係になった影響でそのまま自分に返ってくるのだ。もちろん追撃付きで。


 厄介だ……。由季を誘うことが癖になってしまっている。


 俺は覚悟を決めて帰路に着いた。




 **** ****




「ただいむっ……」


「ちゅっ……んっ……」



 家の鍵を開けて中に入った瞬間、早速ただいまキャンセルからの出待ちゅーコンボを食らってしまった。



「ふぅ……」


「俺じゃなかったらどうしてたんだ。鍵持ってるの俺だけじゃないんだぞ」


「大丈夫、ゆうセンサー搭載してるから間違えない。それで、何買ってきたの」


「暑かったからアイス買ってきた」


「暑いなら全部脱いじゃってもいいんだからね」



 早速、お誘いがきた。それも本当に準備していたようで下着を付けていなかった。キスされた際に反射的に由季の爆弾を触っていたから分かる。


 昼時ということもあり、いつもなら軽くあしらっているが……。



「寝室で待っててくれ」


「っ⁉︎ 限りなくゆうに近い顔を被った偽物!」



 夜以外はいつも適当にあしらっているせいで、偽物だと疑われてしまった。だが、俺と由季しか知らないものがあるのでそれを告げることにしよう。



「胸の下にほくろが一つ」


「っ⁉︎ 熱でもあるの?」



 この秘密を知っているのは張本人とパートナーである俺しかあり得ない。と言っても、最初に気付いたのは俺なんだが。


 由季の場合は場所も場所ということもあり、胸を持ち上げて鏡で見るしか方法がないのだ。直接見ようとしても爆弾である胸なので、見ることができなかったようだ。



「俺だって昼からしたい時があるんだぞ」


「そ、そっか。遂にゆうもそこまで来たんだね」


「そこまでとは?」


「最初は週2で、物足りなくて隔日、毎日になっていったけど、毎日でも足りないの。半日に一回はしたいと思うようになっちゃったの」


「……」


「だから、ゆうも私と同じ気持ちを持ってくれて嬉しいの。えへへ……」



 えへへじゃないよ。只でさえ、一回の時間が長いのだ。流石に勘弁して欲しい。


 だが、由季が幸せそうな表情をするのは嬉しい。これは、ますます科学の力に期待せざるを得なくなってしまった。




 **** ****




 数時間後、由季を制して優雅な時間を送っている俺は……いなくて、絞り尽くされてベッドに突っ伏している俺がいた。


 おかしい。こんな筈ではなかった。


 通用する筈の科学の力は由季に効果を及さなかった。それどころか、拒否反応を起こしていたのだ。


 俺はその時のことを思い出すことにした。




 **** ****




 行け、科学の力!


 俺は寝室に着くなり、その科学の力──電マの力を証明させるべく、由季の股に押し当て起動させた。電マはブルブルと震え、対象を性の快楽で果てさせるべく力を発揮して……。



「何してるの?」



 無反応であった。刺激を与えているにも関わらず、何もされていないと言わんばかりである。


 俺は不思議に思い、なら自分で触ってみるかと試しに由季の股に触れる。



「んっ……」



 普通に感じてくれている。なら、この電マの力も通用する筈だ。そこで場所が違うのだろうと推察し、位置を変えてみると……。



「やっ! 変な物入れないで」


「いや、これ……」


「私の中に入ってきていいのは、ゆうだけなの。ゆうは私の中に他のものが入っててもいいの?」



 そう言われると反論できない。それに今思えば、電マだとしても由季には俺以外の要因で性の快楽で果てて欲しくない。楽をしたいという甘い考えと絞り尽くされて体力が無い状態であったが為に、電マの力に手を伸ばしてしまった。



「それは嫌だな」


「ゆうならそう言ってくれると思った。だからこれは没収。その代わりにこれあげる」



 由季に電マを取り上げられ、代わりに渡されたのは小さい瓶が二つ。見るからに力が漲りそうなやつである。どうしてか、その一つは空なのだが……。



「……由季さんやい」


「はい」


「盛ったな……?」


「お昼の料理にね、入れてみたの」


「何して……」


「試しに自分の分だけ入れてみたけど凄い効き目なの」


「俺の分には入れなかったのか?」


「入れないよ。ゆうには自分の意思で選んで欲しい」


「……」



 俺は由季から渡された瓶を見ながら考える。


 ここで漲るものを飲まなかったら、今にも襲い掛かってきそうな猛獣に対抗する術が無いだろう。


 逆に飲んでしまったら、どうなるか分からない。別に性欲が弱いわけではないのだ。由季に辛い思いをさせることになるかもしれない。


 そこで前に言われた言葉を思い出した。



『私はゆうになら少し位、乱暴に扱われたい……』



 二人暮らしを始めた初日に言われた言葉だ。だが、今度はその比ではない。



「……受け止めてくれるか?」


「大丈夫。ゆうが求めてくれるなら私は無限だから」



 何という強い言葉だろうか。その言葉を信じて俺は覚悟を決め、漲るものを飲み干した。

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