EX13 可愛い母娘と年越し①
先月末、由季が出産した。名前は悠季。
性別は女の子で顔はどことなく由季に似ている。成長したら由季のドッペルゲンガーになるのではないだろうか。
しかし、由季の爆弾の大きさが継承されて同じように成長したらの話だが。そのように成長して他の男の元に嫁ぎに行ったら、耐えられないから同じように成長して欲しくない気持ちもある。
「〜〜♪」
その爆弾を悠季に咥えさせながら、鼻歌を歌っているのは母親になった由季だ。
「いっぱい飲んで大きくなるんだよ。ね、悠季〜」
一時期は本当に母親らしくできるのかと心配していたが、その心配は杞憂だったようだ。それどころか俺がちゃんと父親をやれるのかが心配だ。やはり、女性は子供を産むと母親になる覚悟ができるのだろうか。
「あ〜ぅ〜」
悠季は母乳を飲むのを止めるとじっとこちらを見てきた。まるでこちらの心の奥底を見通してくるような……。
「う〜?」
「パパ抱っこしてって」
そんなことはなかった。
「そ、そうか?」
俺が悠季を抱っこした回数は数えられる程度しかない。オムツ替えの時だって俺が変えようとすると泣くし、お湯に浸からせようと準備している時も泣く。
でも、由季がすれば泣かない。
俺はもうショックを受けた。
それはもうコンドーム一箱を使い終わった後に『あ、次これでしよ?』と、もう一箱出された時のショックより大きい。
「首を支えて持ってね」
そっと悠季を手渡してくる。小さくてぷにぷにしてて可愛くて。なんかもう凄い。語彙力なんて簡単に吹き飛ぶ凄さだ。
「あ〜」
あ〜……赤ちゃんって感じがする。それにこうして持っていると、この子の父親になったんだなって気持ちが湧いてくる。
俺の娘──大切に育てよう。
もし、幼かった頃の由季と同じようなことを考えるようになったら助けてあげよう。決して、どこぞの男に取られたくないからと思ったりはしていない。
「う……」
だが、そう思っているのも束の間、腕に生暖かい感触が……。
「ぅ……ぅ……」
なんだろうか。泣き出す数秒前だろうか。
「オムツ変えてみる?」
「そ、そうだな。一回ぐらいは……」
「うぇぇぇぇん……!」
泣き出してしまった。俺は咄嗟に悠季を由季に手渡した。こんなの対処のしようがない。父親としての仕事は今の俺では無理のようだ。だが、由季は慣れたようで悠季を連れてリビングを出て行った。
「うぅぅ……」
「大丈夫。パパはおねしょしただけで悠季のこと嫌いにならないから」
「う?」
「ちゃんと悠季のこと愛してるから」
「あぅ〜♪」
……何でそこで安心するんだ。俺にはさっぱり分からない。
そうこうして、洗面所で悠季のオムツを変えて戻って来た由季は悠季を手渡して来た。渡してくる時に、笑いを堪えていたから絶対に反応を見て楽しんでいる。
「あう」
再び手元にやってきた悠季は、ぎゅっと俺の親指を掴む。そのまま指を開け閉めを繰り返して再びじっと見つめてくる。
「う〜」
「今度は何て?」
「今夜から解禁だよ……」
「え……?」
不意打ちで夜のお誘いをしてきた。産後からそういったことは一切無く、悠季に付きっきりだった。だからこそ、今ここで誘われるのは心に来るものがある。
「何を言ってんだか……」
悠季がいる以上、俺は父親として……。
「ふぅ〜……」
「うおっ!」
耳に由季の息が吹き込まれると同時に後ろから爆弾を押し付けて抱き付いてきた。
「……本当はもっと早く誘いたかったんだけど、体調が万全じゃなかったの」
子供を産んだのだから、体調が不安定になるのは分かる。だが、回復するのが早過ぎだ。
「これから先、子供を何人産もうとも私の一番はあなた……」
なんという直球の誘いだろうか。これが普通のカップルなら誘った方が負けみたいな感じになると思うのに由季には全く、そういった気配が見られない。そんなやり取りをする時間があるのなら、想いを伝えて一秒でも早く、身と心を一つにできるように努めて来るのだ。
俺と愛し合うことに関してはプライドなんて無いのかもしれない。だからこそ、俺も素直にその夜のお誘いの返答をしよう。
「俺も結構我慢してたかもしれない……」
「我慢は体に悪いことだからね……」
そして、俺と由季は向き合い引き寄せられるようにキスを交わそうとして……
「あうぅぅぅ!」
悠季に邪魔された。それはもう精一杯伸ばされた手によって。
「悠季ちゃん、邪魔しちゃダメだよ?」
「あぅ〜」
「な……パパは渡さないからね」
「う〜」
「ぬぐぐ……」
悠季の言うことが理解できているのか由季は応対している。しかし、状況が芳しくないのか由季はうめき声を出して、対照的に悠季は楽しそうに笑っている。
「あむ〜……」
「んっ……」
悠季は勝利の美酒ならぬ母乳を飲み始めた。それには忽ち女を出していた由季も母親に戻らざるを得なかった。
「もう……悠季は甘えん坊なんだから。ふふ」
先程までのやり取りが嘘だったかのように悠季を可愛がる。その一方で俺は由季とキスができなかったことで我慢の限界が……。
「あぅぅ〜」
それに勘づいたかのように悠季が俺の膝をペチペチしてきた。それにはつい遊んでやろうという父親としての気持ちが湧いてくる。しかし、悠季が手元に居なくなり俺とのキスの続きだったと由季は思い出して迫ってくるが、それも悠季に邪魔されてと……遂には悠季の前でイチャつくことができなかった。
***** *****
「っで、今気付いたんだけど、今日大晦日だったね」
「そういえばそうだったな」
慌ただしい日々が続いていたので日付なんて気にしていられなかった。これが一、二年前なら一年中えっちしていたのだから劇的な変化だ。
「思い出したんだけど、今朝に
「今回はパスかな」
出来るならずっとパスでいい。会う度に俺と由季の仲を見透かしてくる
「あと、あんたたちはもう新鮮な反応が得られないから弄らないって」
「弄るって……。まぁ、そう言うことなら行きたいか由季が決めていいよ」
「う〜ん……久々に帰省しようかな。自分の部屋に少し戻ってみたい気持ちもあるし」
「そっか。なら、悠季が寝てる今がチャンスか」
ということで、
玄関の鍵を開け、リビングに続くドアを開けると、こちらに気付いた海が駆け寄って来た。
「ゆうきちゃん! おねえちゃん、ゆうきちゃんだっこさせて!」
「はいはい」
因みに海は
静けさを由季が司るなら、煩さを海は司っている。なんとも正反対の歳の離れた姉妹だ。
「ただいま、晩ご飯出来たら呼んで」
「おかえり、由季ちゃんが作って?」
「久しぶりにお母さんの料理食べたいからやだ。ほら、二階行こ」
「あ、あぁ……」
「残してくれてるんだな」
「いつでも帰って来られるようにってね。私の帰る場所はゆうの隣なのにね。それで帰って来た理由の一つ目はこれかな」
由季はタンスを開けると一着の服を出してきた。その服は短い間しか着ていなかったのか新品同様のものだった。
「今でも着れるかな
「一応聞くがそれを着てなにをするんだ?」
「
「ぶふっ!」
あまりにも衝撃的な言葉を受けてつい吹き出してしまった。
「高校生活を何事も無く送れてたら恋愛だってしてたかもしれない。放課後とかに誰も近寄らない空き教室に呼び出されて、告白を受けていたかもしれない。感極まって、誰かに見つからないか不安を感じながらも、ゆうに初めてを捧げて、ラブホテルには行けないからカラオケに行って、そこで第二ラウンドを……」
「ちょっと待て。なんでえっちの話しか出て来ないんだ」
「ここ一ヶ月、我慢してたからおかしくなっちゃったのかも……」
俺も我慢していた方だが由季はもっと我慢していたようだ。母親である前に由季も女性なのだ。性欲だってある。それも膨大に……。
それが一ヶ月も封じられればおかしくなるのも頷ける。
俺は立ち上がって部屋の鍵を掛けると、ベッドの上に由季を押し倒した。由季はそれに応じると持っていた制服をベッドの端に置いた。着替える時間等、勿体無いと言わんばかりだ。
「その、付けるなら一番下の引き出しに入ってるから」
「……何で入ってる」
「お泊まり会した時にね、もしもの時の為にって渡されてたの……」
あの時点ではまだ恋仲でも無かったのに、
「因みにするつもりはあったのか?」
「……勝負下着は履いてたよ」
「いけない子め」
「そのいけない子を叱って下さい。あなた……」
その言い換えは反則だ……。
俺は我慢の限界を迎えて、一ヶ月ぶりに由季と愛し合った。
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