第68話 可愛い本仮妻と初めて②

前置き


や、やっと……?


**** ****



「な、なんか凄かったね……」


「そ、そうだな」



俺と由季は式場にいた二人の想いというか、キスする瞬間を隠れながら見てしまった。父さんは絶対に言わなそうな言葉を言っていたし、母さんは少女のように泣いていた。


二人とも見たことがない姿だった。



「悪いことしちゃったかな?」


「一応仮とは言え、俺と由季の式なんだし大丈夫だろ」


「そうだよね。私とゆうの……」



と言ったところで由季が固まった。タキシード姿の俺を見て。そんな俺もウエディングドレス姿の由季を見て改めて息を呑む。


初めて見た時は、二人きりじゃなかったのでマジマジと見れなかった。だから、今度は細部に至るまでこの目に焼き付ける。



「ゆう……格好良い……」


「綺麗だ……由季」


「「回ってみて」」


「じゃあ、俺からだな」


「うん」



その場でくるりと回ってみせれば、由季は手で顔を覆い尽くしてしまった。指の隙間から見える頬が赤く染まっているのを見れば恥ずかしがっているのは明白である。



「どうしたんだ?」


「ゆうが格好良いから直視できない……」


「俺が由季を見たいから隠さないで」


「いじわる……。でもその前に次は私が回る番ね」


「あぁ」



そうして由季がゆっくりと回れば、今度は俺が恥ずかしくなってしまった。その原因が由季の背中だ。背中が開いているタイプのウエディングドレスの為、背中からうなじのラインが見えて凄く色っぽいのだ。



「ゆうも赤くなってる。興奮してるの?」


「しないわけないだろ……」


「そっか。嬉しい……」


「「……」」



いつもの冷静な思考ができない。由季とイチャつくことしか頭に浮かんでこないから。



「……後ろ向いてくれるか?」


「う、うん」



由季も触れ合いたかったようで、特に理由も聞かずに後ろを向いてくれる。再び、由季の背中を見た俺は引き寄せられるようにして近付いて行く。



「ちゅっ……」


「んっ……!」



由季の背中に吸い付き、段々と上に向かいながら首筋を目指す。



「ゆう……んんっ!」


「甘い……」



女の子特有の柔らかい肌が癖になる。それも愛しの人の匂いだから虜になるのは必然であった。



「もっと……」



そして、由季の首筋に吸い付き、近くにあった由季の頬をぺろりと舐めた。



「ひゃぁ……」



ガクッと座り込みそうになった由季だが、後ろから抱きしめて座り込むのを阻止する。



「……ゆう」


「「んっ……ちゅっ……」」



顔を横に向けた由季とキスを交わせば、お互いの舌を絡ませてディープキスを堪能する。



「ゆう……ゆうのが欲しい……」


「じゃあ、二人きりになれるところに行こうか……」


「うん……」



俺は着替えに行った時に伝えられていた、式場に併設されているホテルの部屋に由季をお姫様抱っこして連れて行った。



**** ****



部屋に入り、ドアロックを掛けてから俺は由季をベッドに降ろす。ベッドの上にウエディングドレスが広がり、何だかいけないことをしている気分になってくるが、今ではそれが興奮する材料となる。



「ゆう……」


「由季……」


「「ちゅっ……」」



再び、キスを交わしてベッドの上で絡み合う。お互いの生殖器を弄り合い、段々と快楽を欲するようになっていく。



「由季……我慢できない……」



俺が由季をそれほど大切にしていなかったら、既に男女の関係になっていただろう。だが、愛しているから大切にしたいから、男女の関係になるのは何かきっかけが欲しかったのだ。


今回の結婚式は仮だとしても結婚式だ。愛し合うと神ではなく、お互いに誓い合った。もう由季とは離れ離れにはならない。だから、最後の誓いとして心身を一つにする。



「私も欲しい……でも、その……」


「優しくする」


「うん……いらっしゃい、あなた……」



優しく微笑む由季の頭を撫でてから、俺は由季に覆い被さった。


その日、俺と由季は初めて一つになった。

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