第63話 可愛い仮妻と結婚式⑪
「もうそろそろだね」
由季と恋人繋ぎをして一緒に歩いていると、突然と由季がそう口にした。それとお姫様抱っこは俺に負担を掛けるからと遠慮されてしまった。その代わり、『ベッドに連れて行く時はお姫様抱っこして』とほとんど直球な返答をされてしまったので渋々、引き下がった。
「なにが?」
「私が生娘でいられるのも」
「……」
「間違えた。ママにされちゃうのも」
「……」
ここで何か答えたら負けのような気がしたので黙っていれば、グイグイと肘を突かれた。
「お母さんは一緒に暮らしてるのも長いから、しこたまヤってるって聞いて来たよね。裏を返せば、年頃の男女がヤってないのはおかしいってことだよね」
違うと答えたいが、負けのような……。
「だけど、私は賛成できないかな」
「おおっ、そうだ。そう……」
「だって、愛情が込められてないもん。男女の関係になりたいだけなら、恋人にならなくたって良いもんね。でも、私とゆうは違う。何度も愛を語り合って、何度もぶつかり合った。それでも足りないものがあるから、男女の関係になるの」
「由季……」
「私はゆうの女になる。だけど、それは心と身体を一つにして伝わるものがあると思えるからするの」
良い言葉? なのかもしれないが、俺には全く響いてこなかった。
だって……。
「由季……一つだけいいか?」
「なに?」
「そんな頬を真っ赤にして今にもヨダレを垂らしそうな顔をしながら、話されても全く説得力が無いんだが?」
特に『私はゆうの女になる』と言った時、身震いしていたほどだ。そんなに俺の女にされるのが嬉しいのだろうか。こちらからすれば、貞操の危機に身震いしてしまいそうだ。
「ゆうって草食だよね。胸は触るようになったけど、肝心な部分には触れないよね」
「……」
「へたれゆう〜 悔しかったら私をメスブタにしてみるのだ」
「メスブタって……。由季は受け待ちなのか?」
「……一緒に暮らし始めた頃から覚悟は決めてたよ? 襲われても受け入れるつもりだったけど、全くそんな様子もなかった。精々が胸を揉んでキスしてくるかだけだもんね。おかげで処理するのも大変なんだよ」
「処理って……」
「トイレでしてるの分かってるんだから」
「……」
自分の性事情が由季に筒抜けだったとは……。毎回、由季が寝静まってからトイレで処理していたのだ。それが気付かれていたなんて……ショックだ。
「別にね、出すのは良いの。だけど出す対象が間違ってるの」
「出す対象?」
「トイレじゃなくて私に出してよ」
おぉぅ……。いつにも増してパワーワードが飛び交う。それを言ってる由季も顔が真っ赤だ。相当恥ずかしそうにしている。そんな風になるのなら言わなければ良いと思えるが、俺がいつまで経っても由季を襲わないから言わせてしまっている。
「由季、その……」
「大切にして可愛がりたいだけなら、彼女じゃなくても良い。私じゃなくてもペットがその役割を担ってくれる。だけど、私はゆうの彼女なの。下のお世話もしたいの」
これまでにない気迫で由季が迫ってくる。確かに何度も由季と男女の関係になれるんじゃないかという時間もあったし、タイミングもあった。今朝だって、しようと思えば男女の関係になれた筈だ。
それでも俺は『まだ時期じゃない』と心の中で言い訳をして逃げてきた。
その結果、俺は由季を幸せにするどころか精神面で追い込んでいた。口ではなんとでも言える。正しくその通りだった。
「由季は俺に襲われても嬉しいのか?」
「身体的と精神的なDVは嫌だけど、性的なものだったらものにもよるけど歓迎するよ」
「例えがおかしいのは気のせいかな?」
「文句は襲った後からにして」
「はい……」
普通は襲った後じゃ遅いと思うのだが……。まぁ、その辺りは由季だから仕方がないと俺は無理に納得することにした。
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