第62話 可愛い仮妻と結◯式⑩
食事を取り終えるまでの間に、やっとの思いで心を落ち着かせることに成功した。食べさせ合いっこをしてる余裕は俺にはなかったのでしなかった。だが、挑発してきたことは少し反省して貰いたいので由季に抗議しようと思ったのだが、肝心の由季は店に設置されている掲示板に興味津々のご様子であった。
その中でも由季が興味を惹かれているのは、式場のものだ。神社の辺りには式場が存在しているので、広告が載っていたのだ。
「白無垢とかも良いけど、王道なウエディングドレスも良いなぁ……。あ、試着体験もしてるんだ」
しかし、式場に由季の興味を持って行かれるのは頂けない。例えそれが有機物や無機物でも変わらない。本当に俺も嫉妬深くなったものだ。
「試着だとしても由季が着れるウエディングドレスは果たしてあるのかね?」
「むぅ……やっぱり小さい方が便利……」
「それは……」
「冗談だよ。ウエディングドレスよりもゆうの好みの姿になれる方が嬉しいからね……」
いや、そんなに悲しそうな顔をしても説得力がない。由季には着たい服を着て欲しいが、爆弾が小さくなるのは悲しくなってしまう。こればかりはどうしようもできない。でも、せめてウエディングドレスは……。
いや、待て……。
俺は由季とのイチャイチャ神社周りに夢中になっていたから気付けないでいた。いつになってもあの両親が何の仕掛けもして来ないことに。
だが、仕掛けるにしても姿を現すなり、何かしらのきっかけがないといけないが、その様子も今のところない。
つまり……今回の悪戯は
それをベースにいくつかの考えを浮かべる。
わざと嵌まるのだから、こちらには理があることかもしれない……。
おそらく、神社周りに行くのは予想されている……。
神社のホームページに載っている神前式の詳細で由季が結婚に興味を持ち、意欲的になる……。
そして、式場の広告に載っているウエディングドレス姿の女性を見て、由季が羨ましそうにする……。
つまり、予め行く場所を予測して且つ、何も仕掛けて来ないことをどこかのタイミングで気付かせる。そして、由季の様子を見た俺が仕掛けられて嬉しい罠と言えば……。
「マジか……」
こんなマネ、俺にはできない。
見なくても相手の思考を読んで行動を予測。その上で罠を仕掛ける……。それが数分ならできると思うが、数時間も経っている状態の思考を読むなど到底できそうになかった。
「どうしたの?」
「いや、由季と結婚しようかなって……」
「結婚⁉︎ い、いつするの? それまでには心の準備というか……」
「今日」
「今日⁉︎ 突然というか、そんなに早くだとは思ってなくて、その……」
「とりあえず、神社周りは切り上げて式場に行こう」
「さらっと無視して完全に結婚する気満々だ! 一応、私の意思も確認しない?」
「由季はもう俺のだから良いよな?」
「その言い方ずるい……」
反論してこないと言うことは承諾したということだ。
「由季のウエディングドレス姿、俺に見せてくれるか?」
「分かった……。その代わり、これからの人生もそうだけど、来世もその来世のゆうの心も撃ち抜いて夢中にさせちゃうんだから」
「期待してる。俺も由季に飽きられないように努力するよ」
「うん……」
そして、俺と由季は店を出ると真っ直ぐに式場に向かって歩いていく。
だが、寄り道をしないはずもなく、誓いのキスのリハーサルを何度も行った。
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